第14話 仮想現実における格差社会の解消、及び新グノーシス主義

現時点で、ほぼ貧富の差がなくなりつつあります。

厳密に言えば、スマホを持ち、その通信料を払える限りにおいてです。

VRのもたらす仮想現実は圧倒的で、視覚と聴覚のみにも関わらず、十分に五感を錯覚させ、もう一つの現実と化しつつあります。

おそらく10年以内に、全ての感覚にまで拡張されるでしょう。

つまり、ほぼ現実と同義になった仮想現実を前に、格差は意味をなくします。

かつての王侯貴族や大富豪しか体験し得なかったものが、仮想空間で体験しえるのですから。

また個々の脳神経に大差はありません。

故にいくらでも、仮想現実による刺激でもって、その再現は容易となります。

無論、よりリアリティを感じさせるハードウェアやソフトウェアは高価なものになるでしょうが、すぐにダウングレード版が世に出回るはずです。


一方で、この仮想現実は厄介な側面があります。

映画「マトリックス」の世界、こちらは仮想現実の世界でも貧富の差などはありましたが、おそらく提供されるだろう仮想現実は、ご都合主義的な世界となるでしょう。

多少の苦痛はあっても報酬や達成感ありきで、一切の見返りなきコンテンツはほぼないと考えられます。

ユーザーのニーズに合わない世界観は必要とされませんから。

或いは、苦痛に満ちた仮想現実を望む趣向もあるかもしれませんが。

結論。

仮想現実が現実を上回り、ある種の理想郷となる。

プラトンの比喩、肉体という牢獄から解き放たれ、生きながらにしてイデア界で暮らせる訳です。楽園と形容せざるをえません。

しかしながら、私はこの世界を、あたかもデミウルゴスの造ったモノと同じと捉えます。

機械仕掛けの神によってもたらせれた甘い世界の出来事は、脳神経の幻想に過ぎません。

ソフトウェアの不具合、ハードウェアの故障、停電などで否が応でも目覚める訳で、仮想現実は仮想現実のまま、どうであれ、現実は残っています。

貧富の差がなくなった社会で、現実と仮想現実とどう折り合いをつけていくかが課題となっていくでしょう。


∴共産主義と資本主義、さらなる向こう側には新グノーシス主義があると推測します。

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