ご機嫌なソラの帰宅とお出迎え
部活見学の帰り、涼香先輩の家に誘われて豪華なマンションに誘われ。
一緒に楽しい時間を過ごして、ようやく家に帰ってきた。
時間はぎりぎり夕食に間に合う時間。
一応美夜ママには連絡してはいたが、生真面目なソラは急ぎ足で家に駆け込んだ。
「た、ただいまぁ。遅くなってごめんなさい」
慌てて脱ぎ捨てた靴を、しゃがんで整えていたら、奥の方からぱたぱたと誰かが走ってくる音が聞こえた。
「おかえりなさい、ソラちゃん。そんなに慌てなくても大丈夫よ。楽しかった?」
「うん、とっても!美夜ママ、寄り道、許してくれてありがとう」
美夜の包み込むような抱擁を受け、ソラもぎゅうっと抱き返し、柔らかく唇を触れ合わせる。
「そう。楽しかったなら良かったわ」
そんなお行儀のいいお帰りなさいのキスを滞りなく執り行い、美夜はそのまま愛娘を腕の中に閉じこめたまま、たっぷりと名残を惜しもうとした。
だが、そうはさせないとばかりに、奥からバタバタと慌ただしい足音が近づいてきて、
「ソラ、お帰りぃ~。さ、私ともちゅーしようね~?」
そんな言葉と共に、腕の中の存在はあっという間に奪い取られてしまった。
そして目の前で繰り広げられる親子で行うのはどうかと思うような濃厚なキス。
恋人でありもう一人のソラの母親でもある有希の横暴な行動に、普段は温厚なはずの美夜の額に青筋が浮かぶ。
順番くらい、大人しく待てないのか、と。
そんな苛立ちに背中を押され、長いキスの合間にふはっと息継ぎをするようにソラが唇を離したのを見逃さず、美夜はすかさずソラを奪い返した。
そして。
「ソラちゃん。もう一回、私と。ね?」
「ふぇ?美夜ママ??」
混乱気味なソラのほっぺたを両手で挟むと、有無を言わせずにその唇を奪った。
いつもは母親としてのキスという建前を崩さないように遠慮していた分を取り戻すかのように、それはもうねちっこく。
見ている方が赤面してしまいそうな程のキスを終え、魂が抜けてしまったようにぼんやりしてるソラを腕の中にぎゅうっと抱きしめたまま、美夜は参ったか、とばかりに有希の方を見た。
しかし、恋人の顔に自分が思っていた表情がかけらも浮かんでいなくて、美夜は思わず首を傾げる。
ソラを美夜に取られて悔しそうにしているかと思いきや、有希の顔は幸せそうに緩みきっていて。
美夜はちょっぴり心配そうな顔で、有希のほっぺたをぺちぺちと叩いた。
「ちょ、ちょっと、有希。どうしちゃったの?……頭、平気?」
「いやぁ……なんていうか。好きな女と最愛の娘が本気でいちゃいちゃしてる姿をこんな間近で鑑賞できるなんて、幸せ以外の何でもないよね?なんか、色々たぎって、鼻血吹きそう」
「……前々から薄々思ってたけど。有希って変態よね」
有希の口から出た、予想の斜め上をぶっちぎった言葉に、思わず美夜が思わず本音を呟く。
何で私、こんなのに惚れてるんだろう、とそんな疑問を豊満すぎる胸に渦巻かせながら。
だが、愛しい女の冷たい視線のなんのその、
「美夜、とりあえず今夜は覚悟を決めておくように!」
有希はにっかり笑ってそう言うと、美夜の唇にちゅっとキスをした。
そして、思わず赤面した美夜の腰に腕を回し、まだぼーっとしているソラの肩を抱くと、
「さー、ご飯、ご飯っ!急がないと餓えた男共が反乱を起こすわよ~?」
と言いながら、二人を連れて食堂へとなだれ込んだ。
ソラと美夜、二人のいつもと違う様子に、二人の男親は不思議そうな顔をして、何かあったのか、と有希に問うたが、その問いに有希はにんまり笑って答える。
「そんなの、女の子だけの秘密に決まってるでしょ?」
と。
その言葉に、透はさわらぬ神に祟りなしとばかりに賢く口をつぐんだが、例の如く、武史にそんな危機管理能力が備わっているはずもなく。
「ソラはともかく、お前と美夜は女の子ってガラかよ?」
といらんことをぺろりと吐き。
結果、有希と美夜に盛大に噛みつかれ、こてんぱんにやっつけられた。
そんな相方の姿を見ながら、透は頭が痛いとばかりにこめかみをもみほぐし、やっと正気に戻ったソラは訳も分からずきょとんとし、大人達の騒ぎに赤ちゃんの陸がギャーと泣き出して。
……今日も悠木家の食卓は、とってもにぎやかだった。
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