第4話 犬の嗅覚は鋭い
「なんか漬物臭くないか」
前の人間がとなりの人間にひそひそ声で話しかける。
「うむ、確かに臭いな」
「漬物を盗み食いしたやつでもいるんじゃないか。」
「ははっ!!馬鹿なヤツがいるもんだ!!」
「見つかったら、直ぐに処分されるだろうな。」
後ろ、後ろにいるんですけど!!!!
ちょび髭がギロリと睨みつける。
「おい!、そこ煩いぞ!」
「誰が馬鹿なヤツだ。言ってみろ!!!」
「やばい、所長に気づかれたぞ」
おいおい何やってんだよ……
しかし、あのちょび髭が所長か……
「気にくわんな、ちょっとお前見てこい!!」
「はい……」
髭所長が部下に指示をだし、下っ端所員(坊主)が駆け足で近づいて来る。
「貴様等、何かあるのか!!反抗的な態度は即処分の対象だぞ!!!!」
下っ端所員が近づいて来る。2メートル前付近で一度立ち止まった。
「むむ、漬物臭いな……」
そんなに臭うのか、漬物……
所員は、数秒思案をしてから、ニヤリと笑う。
「ははーん、そういう事か……」
踵を返し、直ぐに髭所長のところまで戻って行く。
髭所長に耳打ちをする。
髭所長は囚人達を睨みつけながら報告受けている。
次の瞬間には、満面の笑みでこちらに向かって話しかける。
「ふっはははは、残念ながら、他にも昨日の残党がいたようだな……」
ヤバいんですけど……! 即日処分されてしまう!!
静まり返る囚人達――――
「貴様ら、ばれないと思ったら大間違いだぞ……」
「おい、誰かチャーリーを連れてこい」
「はっ」
暫くすると、所員に抱えられチャーリーが登場する。
チャーリーは、黒と白のマーブル色のフレンチブルドッグだった。
「おおお、相変わらず可愛いな!チャーリーは……」
チャーリーの頭を撫でる。
チャーリーは、気持ち良さそうな顔をしている。
「チャーリーは漬物が大好物でな」
そんな犬いるの!?
「よしよし、さぁ、チャーリー、見つけてきておくれ」
チャーリーを放すと、勢いよくこちらに向かって走って来る。
小さな鼻をクンクンしながらその場を探索し始める。
チャーリーは右斜め1メートル前で止まった。
再度確認したかの様に、一度対象を見上げた後に、
鼻をクンクンしたかと思うと、突然吠えはじめる。
「ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!」
「早速見つけたようだな……調べろ!」
髭所長がゆっくりノッシノッシと歩きながら、こちらに向かって来る。
「何も持っていませんよ!!!やめろ!!!!」
斜め前にいる若い普通の男が、抵抗虚しく屈強な所員2人がかりで調べられる。
暫くすると、ソーセージの束が出てきた……
「ありました!!!」
所員が大声で報告する。
「フハハハっ!馬鹿なヤツだな。」
「くっ」
「連れて行け!!!すぐに他に仲間がいないかも調べてやるからな!!
覚悟しておけ!」
所員は、2人がかりでソーセージ君を引きずりながら部屋から連れていく。
「本日の朝礼を終了する!!!!
各自今週の作業持ち場につけ!!
サボった場合は、許さんぞ!!!」
少しの沈黙後――――
囚人達が各自の作業場に向かって動きだそうとする。
ふー、危なかったな。
とりあえずやり過ごせたようだ。
ソーセージ君、すまないな俺のせいで……
心の中で、謝っていた。
気がつくと私の目の前で、チャーリーが尻尾を振っていた。
しゃがんで頭を撫でてやると、凄く喜んでいる。
「よしよし」
その様子を見て、こちらに誰かが向かってくる。
「懐いているな……犬を飼っていた事はあるのか?」
髭所長が聞いてくる。
「ええ、まあ、ですが凄く人に慣れていますね。チャーリーは……」
と答える。
「ふふっ そうか、そうか」
「チャーリーは、人によく懐く。そして賢いのだよ……」
「ええ、私もそう思います。」
どう思っているんだよ!!
「そうだろ、そうだろ」
「漬物が好きなんだよ、チャーリーは……」
「匂いが好きでよく舐めているのだよ……」
うん?
ん??
数秒の間があってから
再びチャーリーを見ると、
いつの間にか、めっちゃくちゃ
腹を舐めている事に気がついた。
――汗が引くのを感じる。
「こいつも取り押さろ!!!」
「はっ」
万事休すだ。
「まさか漬物を盗むやつがいるとはな……
貴様には後で、とっておきの熱いのをくれてやる!」
何だよ、それ怖えええ!!!!!!!!!!!!!
ソーセージ君と同様に引きずりながら部屋から連れていかれる。
囚人達の間では、恐らくあだ名は漬物とかになっているんだろうなと想像する。
もう終わってしまうのか……
いや、まだだ!!!最後迄諦めない!!!
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