第2話 思わぬ物が自分を救う事ってあるんです。

牢屋の囚人達が足取り重くどこかへ向かっている。

その行列の後ろをただ何も考えずに付いて歩いていく。


一体どこに向かっているのだろう。

恐らく一度集合して、労働の分担を決めるのだろう。


ただ無思考状態で前の人間に付いて

階段を昇っていると、途中で食堂らしき場所がちらっと見えた。


丁度よい。


今は集めれられる情報は多い方が良いだろう。

どんな場所か確認するため周りの様子を窺いながら

素早く行列から離れ部屋に入ってみる。


部屋の中は広々としており、50席はあるだろうか。


今にも壊れそうなボロい木の机や椅子が整然と並んでいる。


ゆっくり中を歩いてみる。


テーブル机はボロいながらも丁寧に拭かれており机上にも何もない。


壁には、私語厳禁や掃除分担表などの張り紙がテープで貼ってあるぐらいで

特に使えそうな物は何もなかった。


ふーっと息をゆっくり吐きだす。

とりあえず文字は読めるな。良かった。


奥には厨房が見える。誰かいると厄介なので慎重に中の様子を窺う。

細心の注意を払いながら中を覗いてみると、幸いまだ誰もいないようだった。


忍び足で厨房に入る……。

思ったより中は狭く、4畳ぐらいの縦に長い部屋だった。


部屋の真ん中には大きな釜があるぐらいで、特に目新しい物は何もない。


壁には道具棚があったので、

早々に開けてみようとしたが、案の定鍵が掛かっていた。

料理道具(刃物含む)が入っている可能性が高いので、当然と言えば当然だった。


特に何もないので、諦めて囚人達の群れへ戻る事を決意する。

厨房から出ようする途中、足元に壺がある事に気がついた。


何となく気になったので、壺に顔を近づけて観察する。


匂いを嗅いでみると、鼻をツンと刺す刺激臭……発酵した匂いがただよっている。


 これは恐らく漬物ではないか、と予想する。


特に意味も無く

何故かは分からないが、壺の中を開けてみる事にした。


中には案の定

漬物石が入っており、その下には布が重ねられ

最終層には漬物が詰まっている様だ。


布をどけて

ぬからしき物を少し手にとり舐めてみる……


かなりしょっぱい。塩辛いな……

深漬けか――


そう言えば、きゅうりの浅漬けが食べたいな……


などと考えていると、


突然に一案が閃く。


こ、これはまさか……

逸る気持ちを抑え、壺の中ので漬物にかかっている布を確認する。


布は2枚重ねてあった。


一枚上部の布を引っ張りだし拝借する。


布はどこにでもある普通の布だが

十分に使えると気がついたのだ。


暖かい……


うおおおおおおおおおおお!!!!


暖かいぜええええ!!!!!!!!!


取り出した布を腹巻きとして利用する。


少なくとも囚人服よりは、品質が良い様に感じた。

多少漬物臭いが背に腹は変えられない。


これで少し希望が見えてきた。

何はともあれ、まずは体調管理だ。


体を思い、看守に先程投げつけられた背中を軽くさすった。

しかし囚人服は、漬物石の置き布より品質が悪い事になる。


「俺は漬物以下かよ……」


大きく息を吐いた。

そして、足早に囚人達の群れへ戻るのだった。

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