第12話 レコード

たまたま知り合いのスナックのてまりというお店に行った。そこは、再開発で様変わりした小杉。20年くらい前に大学病院で健康診断に行った時とは大違いの街並み。おしゃれになっていて、私の知っている小杉ではなかった。でも、そのお店は駅前にもかかわらず、その一角は昔ながらの佇まいだった。

 お店自体は、はじめてなのだが、なんだか父達の喫茶店を思い出すお店だった。カウンター、ビロードの椅子。外を眺めれば、東横電車が横を走っている。なんだかいいなぁ、懐かしさがこみ上げる。

 美味しいお酒やおつまみをいただきながら、なんだか流れている曲が全て、若い頃に聴いていた洋楽だった。

 そして、びっくりしたのは、レコードの箱。それも子ども時代や10代に聴いていた懐かしの歌謡曲。ああ、全て聴きたいが、チョイスして、それも10枚以上だったが、かけてもらった。音もなんだかレコードなのによくて、真空管を通して、スピーカーから本当に心地良い音が流れている。

 レコード、つい最近、実家が建て直すので、思いっきり捨ててしまった。ああ、こんなことなら、とっておけばよかった。もちろん、もうレコードプレーヤーをもっていないので聴けないが、ジャケットを眺めるだけで楽しいことに、今更ながら気がついた。何度も、箱の中にある、レコードを眺めてしまう。曲を聴けば、一緒に歌えるものばかりだった。レコード、いいものだな。


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