第6話 近所にあった別の氷屋さん




 家の近くに別の氷屋さんがあった。いつもは気にならない程度の存在だった。でも夏になると、とたんに芸術の場と変わる。

 大きな四角い氷を(たぶん、うちに配達されるのと同じサイズのような気がする)、のこぎりでシャッシャッ削る。その後、ノミなどを使い、美しい造形物を作り上げていく。

 記憶に特に残っているのは、熱帯魚。エンゼルフィッシュを見事に作り、どうやっているのかわらないが、シマシマ模様もついている。水の中らしく、ワカメのような水草もうねうねと。本当に見事だと思い、眺めていた。

本当はあんまり見ていてはいけなかったのかもしれないけど、子どもだったし、興味があったからしばらくいつも眺める。

作っている人は、見ている私を邪魔にしなかったし、でも何も話しをしたこともなく、たんたんと自分のお仕事をしていた。

 暑いんだけど、氷をそばに感じて、じーっと見ている。なんと贅沢な時間だったんだろう。



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