第2話 自己紹介の際には自分の出来ることを正しく伝えましょう

一週間がたち

王様に言われたように城にきた私

荷物はストレージ収納魔法を使って、倉庫にしまったので今は手ぶらだ


目の前にいる衛兵さんに、王様に呼ばれて来たことを伝えると

怪訝そうな眼で見つつも、城の中に入っていった

少しばかり待つと衛兵さんが戻ってきて

「入場許可が下りた、ついてこい」

といって案内された


「ここだ、粗相のないようにな」

隠れて左目に使っていたディティクト探査魔法を解除してお礼を述べる

どうやら執務室のようで、王様の他にも何人かいるようだ

「このまま入ってもいいのでしょうか?」

「ああ、連絡はしてあるから大丈夫だ」


その言葉を信じ

扉にノックをする

「誰だ?」

「エルフィールです」

「来たか、入ってくれ」

中に入ると

目の前の机には王様

それを囲むように五人の少年少女……

全員有名人なのは気のせいかな?

「では、全員そろったので話そうか」

王様が口を開く

「今回お前たちを呼んだのは、とある目的のためだ」

「お前たちにやってもらいたいのはほかでもない」



「魔王の討伐だ」


はぁ、魔王の討伐ですか

「それってのお仕事ですよね、なんで私たちに?」

私が勇者の娘だからかと暗に問いただしてみる

「これは内緒の話なんだが、勇者は前魔王との決戦で魔力を使い果たしている」

いや、あの人魔法使うのが苦手なだけじゃないですか

去年、母に怒られそうだからって、ハイウィング上級加速魔法使ってましたよ

「それに、いつまでも勇者という存在に頼ってばかりではいられないからな」

「そうですか」

その言葉で周りも納得したようだ


「では今回集まった6人同士、親睦を深めてくれ」

そう言うと、私たち6人を側で控えていた騎士に任せた


別室に連れてこられた私たちはとりあえず自己紹介をすることになった

「まずは俺からだな!俺はアレス、アレス=ハリアード 18才だ。剣にはちょいと自信があるぜ!」

剣士としては、王様に肩を並べられるかもしれないと言われている武芸大会の最年少記録保持者であるアレスさん

「僕は、ウィリアム=イクサード 17才だよ。長いからウィルって呼んでね」

王国傘下の魔法学院で主席。座学だけでなく実践でも大人顔負けの力を持つウィルさん

「私はエリス=マーレン 年は18才です。ユイリス教の司祭を任されております」

この世界で広く信仰されているユイリス教、6人いる大司教の娘にして司祭のエリスさん

「うちは サリア=ウォーデン 17才やで。うちの店で揃わんもんはなんもないで!よろしくな!」

王国の4貴族の1つウォーデン家の息女にして、ウォーデン商会の若き会長サリアさん。

「ティア=カタレット…16才…よろしく」

騎士団長の娘にして、騎士団で王様付きに認められているティアちゃん



これ私、混ざらなくても…魔王倒せそうな…

私、要らなくない?

「それで君は…?」

ウィルさんに問われ、答える

「私は エルフィール=クラスカインド 好きに呼んでくれてかまいません。16才です 料理とか得意です」

とっさに母のほうで名乗っちゃったけど問題ないですよね…?


それから、小さな宴会となり

「明日から、みんなよろしくな!」

アレスさんの一言で解散となった

今日は城に泊まり、明日から出発するそうです



なかなか眠れず夜の城を歩いていると

「…エル」

「ティアちゃんも眠れないの?」

「…うん」

「私と同じ…だね」


ティアちゃんとともに城の庭に出て話す

「エルは…ほんとのこと言わないの?」

「ほんとのことって?」

「おじさんやおばさんのこと」

ティアちゃんのことは昔から知っている

一緒の学園に通っていて、よく話をしたりお互いの家に遊びに行った仲だ

「皆に伝えないのは、この旅のエルフィールを勇者や魔王の娘にしたくないからかな?」

「…なんだか、おじさんみたい」

「そう?ならそうなんじゃないかな」

私はあの人の娘だし


そうしてその日は二人で星を少し眺め

部屋に戻っていった

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