元勇者と先々代魔王の娘、今代魔王討伐に参戦!(ただし本人はただの町娘の出)
かすかに存在する何か
旅立ちとその訳
第1話 約束には本人の承諾が必要です
「今日もいい天気だなぁ」
洗濯物を干しつつ空を見上げそうこぼす
見渡す限り雲の無い青空
照る日差しが心地よく絶好の洗濯日和
洗濯物を干し終え家に入り朝食を用意する
今日はベーコンエッグにサラダとロールパン
そこまでしたあと、母の部屋に入る
魔法薬の調合を終え机に突っ伏して眠る母に、ため息をつきつつ
「お母さん、起きてご飯準備出来たよ」
「あと、70年~」
「防腐処理しても腐ってるよ」
こんな不健康な生活をしてても出るとこ出て、しまるとこしまってる体はずるいと思う身長も高いし……
「ほら、今日は王様来るんでしょ?」
「あぁ、そんなこともあったねぇ」
王様は、お父さんが冒険してたときの仲間で
一流の剣士で、戦略眼も持った超人で顔もいい、あり得ないくらいハイスペックな人だ
「けど、何のようだろ?」
「そういえば、あなたって16になったんだ……よね?」
「いくら百年単位で生きてるからって自分の娘の歳ぐらい覚えててよ」
母は、人間じゃない
本人曰く、歴代最強と呼ばれるほどの強さを持った魔族の王
つまり魔王だったそうだ
「ごめんごめん許して、ね?」
……そんな風には見えないけど
そして父は、魔王を倒して世界に平和をもたらした勇者
……私からしたら年がら年中旅に出て、たまに戻ってはお土産くれるただの父だ
「それで、16になったからって何か関係あるの?」
「んー、内緒!」
「いい歳して……ちょっとは恥ずかしいと思わないの?」
そして私は
そんな二人の間に生まれた
得意なことが、料理・洗濯・掃除のどこにでもいる一般市民だ
「やぁ、エルちゃん 元気かい?」
「ようこそ王様、お母さん呼んできますからそこに座っててください」
「相変わらずだね。一応、僕は王様なんだけど?」
「ウチに来てまで、王様扱いは嫌なんじゃないんでしたっけ?」
「僕、口に出したことあったか?」
「三人揃った時、お酒飲みながらそう言ってましたよ」
その次の日二日酔いになりながら帰って行きましたよねと言ったら、照れ笑いを浮かべていた
「今日来たのは他でもない」
母を呼んできて、部屋を出ようとすると呼び止められ、話に入れられた
「アイツとの約束を果たしに来たんだ」
「あーやっぱり?」
「はぁ、約束ですか……」
母は納得したようだか私にはよく分からない
「聞いてないのかい?『娘が16になったら旅をさせてくれ!』って言って僕に土下座してきたんだよ」
王城でいきなり土下座されてあの時は参ったねと笑っている
ちょっと待って
昔、父と一緒に旅をしてみたいとか言った覚えはあるが、そんな約束は身に覚えがない
そう母に言うと
「あの人、サプライズとか大好きだから」
誕生日ケーキの中に結婚指輪を入れたりするような人だしねぇとしみじみと言っている
「はぁ、まぁ分かりました。旅に出たいとは思ってましたし、いいですよ」
「じゃあ、一週間後に城に来てくれ」
通行証とか用意するから
「え、一週間後?」
「うん、一週間後」
「通行証貰うだけですよね?」
「同行者とかとの顔合わせとかもするよ?」
「同行者?一人旅じゃないんですか?」
「国としての事業で、旅して貰うから」
「……聞いてないの私だけですよね、ソレ」
「そうだね、アイツが『エルフィールは、自分の予定後回しにする奴だから、仕事としてやらしてやってくれ』って言ってたからな」
今度会ったら全力でひっぱたく
そう決意して、旅立ちに必要なものをリストアップし就寝した。
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