ハロウィン当日①
待ちに待ったハロウィン当日がやってきた。本当はコスプレを思う存分楽しむ一日にしたかったのだが、そうは問屋が卸さないようだ。
ということで、今日の服装は死神がいつも来ている黒マントを羽織っている。黒マントの下は何を着ようかと考えたが、動きにくい服装だと犯人をすぐに捕まえるのに支障が出てしまう。動きやすい服装ということでなぜか黒マントの下はジャージになった。私は別にジャージでなくてもよかったのだが、ジャスミンが動きやすい服装といえばジャージだといって聞かなかったため、ジャージとなってしまった。もちろん、ジャスミンもジャージである。
私は紺色の上下のジャージで、ジャスミンは今日もド派手なショッキングピンクの上下のジャージである。本当に派手な色が好きなようだ。
死神たちの動画では、犯行予告時間は10月31日の正午となっていた。場所は私たちが通う大学。結局、大学側はこの日を終日休講にすることに決め、警察を呼んでの警戒態勢を敷くことになっていたはずだ。
私たちが大学前に着くと、すでに警察が大学前の校門で警戒に当たっていた。警察が邪魔だが、警察がいるお蔭で一般人は大学に入ることはできない。野次馬根性で集まってきた一般人は大学の前に大勢集まっていた。しかし、彼らは警察が追い払っていたので、大学内には人が入れない状況となっていた。
野次馬たちの中には、今日がハロウィンであること、さらに今日死神がやってくることに合わせて、黒マントを羽織っている者がいた。これでは、本物が現れても見つけるのに時間がかかってしまうかもしれない。かくいう私たちも同じような格好なので、人のことは言えないのだが。
「はあ、せっかくハロウィンということで、蒼紗に似合う衣装を考えてきたのにこんな地味な服装を着なくちゃいけないなんて、今年のハロウィンは残念な一日でしかないわね。」
「そんなことを私に言わないでください、私だって本当はハロウィンをめいっぱい楽しむ予定だったのですよ。それが死神の変な犯行予告のせいで台無しです。」
「それもこれも全部あの死神たちが悪いということね。捕まえてぎったぎったに痛めつけなければ気が済まないわね。」
腕を鳴らしてやる気満々なジャスミンである。まあ、やる気がないよりはましなので放っておくことにした。
私たちは大学前までくると、まずは様子をうかがうことにした。時刻は11時40分を指していた。犯人は正午を指定していたので、このまま正午まで待っていれば、犯人はやってくるだろう。やってきたところを一気に捕まえればいいだけだ。
時間まで私たちは校門前の草陰に身を潜めていることにした。
私とジャスミン以外に伴坂も今日は来る予定になっていた。きっとどこかにいるのだろう。綾崎さんは私に任せてと言ってあるので来ていないと思う。もしかしたら来ているのかもしれないが、来ていたとしても、無視することに決めていた。私は自分に任せて欲しいと頼んでいる。それなのに勝手に事件に巻き込まれたら、それは自己責任でしかないだろう。
車坂はどうだろうか。そもそも車坂は今回の事件に関係があるのかないのかいまいちわからないが、死神であることは間違いないので、今回の事件には何かしら関係しているはずだ。別に来ていようが、来ていなかろうが、こちらは大して変わらないのだが。
そんなことを考えているうちにスマホを確認すると、時刻は正午5分前となっていた。校門前にはたくさんの野次馬たちが警察と押し問答をしていた。時間を追うごとに黒マントの人間が増えているようだ。
死神らしき二人組は来ていないようだ。犯人の二人組を探すにしても、あの綾崎さんのお兄さんだという金髪のイケメンは、目立つので見つけることができそうだからだ。それが今は人ごみの中には見受けられない。
しかし、黒マントの人数が増えてきていて、ざっと数十人はいるだろうか。これではいくら見つけることができるとは言っても、時間は確実にかかるだろう。
それにしても今日の天気は快晴で雲一つない良い天気であった。10月の終わりとはいえ、じっとしているだけでもじわじわ暑くなってきた。早いところ、犯人が出てきてくれないと暑いし、日差しは強いしでこちらが先にばててしまいそうだ。
「キンコーンカンコーン。」
正午を告げるチャイムが鳴り響く。周りを見渡すが、死神の二人組らしき人物は見当たらない。どうやら犯人の犯行予告ははったりだったようだ。そうと決まれば、家に帰って次の作戦を立て直さなければならない。
「帰りましょう。結局、犯行予告などあてにならなかったということです。まあ、被害が大きくならずに済んだことはいいことですが、またいつ現れるか調べなければなりませんね。」
「そうもいっていられないみたいよ。あそこ見て、死神さん、ちゃんと予告通り来たみたいだから。」
ジャスミンが指さす方向に目を向けると、そこは大変なことになっていた。警察と野次馬たちが言い争っているのは先ほどから見ていたが、どうも様子がおかしい。言い争っているうちに疲れたのだろうか。突然がくりと倒れだす人が続出していた。
バタバタと数人が倒れだすと、あたりはパニック状態に陥った。それもそのはずだ。人が原因不明で何人も倒れだす状況を見れば、パニックにもなると思う。
突然倒れだすなど普通ではありえない。ましてや今は10月も終わりでそこまで気温も高くないし、日差しも強くはないので、熱中症ということもなさそうである。
となると、原因は一つしか考えられない。死神たちがここに現れたということだ。
「やっと現れましたねえ。今日こそ捕まえて見せますよ。遠坂、待っていなさい。」
私たちの背後から伴坂の声がした。伴坂も来ていたようだ。突然後ろから声がすると驚くので、前もって声をかけるなら先に話すといって欲しい。
今日も伴坂はスーツを着ていた。伴坂は黒マントを羽織らないのだろうか。疑問に思ったが、聞いている暇はなかった。
「おや、朔夜さんたちも来ていたようですね。では、作戦を実行していくとしますかね。今日でこの事件を解決してしまいましょう。」
伴坂のかけ声とともに私たちは草陰から飛び出した。そして、騒ぎが起こっている人ごみに紛れ込む。まずは、どうにかして犯人を見つけないことには捕まえることができない。
私が予想していた事態になってしまった。黒マントが予想以上に多くて、犯人がどの黒マントなのかわからない。本物を見つけるのに時間がかかりそうだ。さらには、私とジャスミンも黒マントを羽織っていて、普通の服を着ている野次馬が黒マントに無差別に攻撃している。
必死に人ごみに紛れて野次馬の攻撃を避けながら、押し合いへし合いをしながら、犯人を捜していると、ちらりと視界に黒マントを羽織った二人組を見かけた。 見つけたと思い、ジャスミンや伴坂に知らせようと声を上げようとした。
「見つけました。あそこに二人組が……。」
私の声は何者かに遮られた。何者かが私の口をふさいできた。誰かと思い後ろを振り向くと、そこには予想外の人物がいた。
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