第8話

翌日、僕は普通に登校した。

 学校の先生には驚かれたが、単位さえとれば卒業も問題ないとのことだった。

 クラスに戻ると、花がおいてあった。

 菊の花。

「おい、不登校野郎が帰ってきたぞ」

「自殺したのに賭けてたのにな」

 罵声が聞こえる。過去、おびえてしかたがなかった連中の声。

 だが、何も感じない。僕は、強くなったのだ。

「おい、無視すんじゃねぇよ、このカス」

 一人が僕の肩をつかむ。振り向きざまに裏拳を顔面に、昏倒したところに腹部に掌底をくらわした。

「な、なにすんだよ」

「殴っただけだよ。ほら、昔、さんざん僕にやったじゃないか」

 僕が一歩近づくと、彼は一歩さがる。その繰り返しで、壁際に追い詰める。

「どうしたの? もしかして痛かった?」

「てめぇ――」

 殴られた。しかし、痛みはさしてない。

「なっ」

「ほら、お返し」

「ぐべぃ」

 汚い嗚咽がもれる。そして、彼は悲鳴とともに教室から走り去った。なるほど、かつての僕もこうすればよかったのか。

「ほら、次」

 はやし立てた連中も後を追うように逃げ出した。

 僕の世界は、こうして変わった。

 なるほど、これがチートスキルを手に入れた側の世界か。

 実に――空しい。

 そして、つまらない。彼らは、僕をいじめて何が楽しかったのだろうか。まるで理解できない。

 僕は花を最初に殴った彼の机の上に置き、授業を受けた。

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