第6話

今泉さんの教え方は僕には合っていた。

一つの問題に対して、複数の参考書を同時に使う。

「一回読んだだけじゃ、覚えられんだろう? 同じ文章を読むのは飽きるだろう。なら、同じ内容を別の文章で読めばいい。だから、君にはこの参考書五冊を今週中にクリアして欲しい」

 どんと参考書を置く。

「輪唱みたいなもんだ。一冊を一日ずつずらしてやる。五日連続で同じ内容をやれば、記憶に定着する。とりあえず、その容量でまず数学を極めろ。数学は解法さえみにつければ、後は電卓たたくようなもんだからな」

「今泉さん、手がもう限界です」

「大丈夫、お前はもう死んでいる――じゃない、一度死んでる。ゾンビに痛覚は存在しない」

 スパルタ学習であった。

 だが、不思議と続けられた。今泉さんは僕を見捨てない。馬鹿にしない。励ましてくれる。だから、この生活も苦ではなかった。

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