『俺は怪獣 / I, Kaiju』コメンタリー⑥
■本作の書かれたタイミングについて
本作は2013年の3月頃に脱稿している。
庵野秀明プロデュースによる特撮博物館で『巨神兵東京に現わる』が公開された後であり、デルトロ監督の『パシフィック・リム』公開の三ヶ月前である。
■テーマソングについて
新作、それも以前とは趣向の異なる新機軸の作品を構想する際にラノベ作家がまずやるのは「テーマソングを決める」ことである。
作品のテーマや世界観に通じる曲を勝手に主題歌に設定して紐付けし、それを聞けばすぐにその作品世界に入っていけるようにマインドセットしておくのだ。
え? そんな話は聞いたことがない?
ラノベ作家なら全員やっていることですよ?(真顔)。
というわけで今さらながら本作のテーマソングはデーモン小暮閣下の2002年発売のソロアルバム「SYMPHONIA」収録曲「THE VOICE OF THE FOOTMARK」である。
歌詞の中にストレートに「怪獣」のワードが入ってるこの曲をEDに、同アルバムの2曲目「BURNING BEAUTY」をOPにすると実にいい感じなので気が向いたらお試しあれ。最近は便利なものでApple MusicやAmazon Music Unlimitedを利用していればストリーミングで聴けます。
■
イメージソースはもちろん初代ウルトラマン――と思わせておいてその実『液体金属のスーツを纏っているためウルトラマンっぽく見える巨神兵』である。
プロトンビーム撃ちまくりでは芸がないのでバリアーとその応用の八つ裂き光輪をメイン武器にしたところ、どうやって倒せばいいか分からんレベルの強さになってしまったので正直困った。
■第六話について
さて、最終決戦篇である。
昭和ガメラといえば敵怪獣の超能力で大ダメージを受けながらもしぶとく泥臭く戦うイメージなので、本作もそれに倣っている。
最終決戦のために用意したギミックも大盤振る舞いとなった。
・土壇場でDSK48の能力を獲得
虹の攻撃を「無数の透明の針」とするアイデアはいわゆるスペシウム光線系のエフェクトが「針状の光線の束」として描かれているところから。毒の虹を腕の側面から発射したら光線技っぽくなって面白いと思ったため。
〈デッドリー・レインボー・ストーム〉はタロウのストリウム光線のイメージ(腕をX字に組むのでネオストリウムの方か)。
・固形燃料ロケット式というかつてない飛行能力
四肢を甲羅に引き込んで回転ジェットで空を飛ぶのはガメラの最大の魅力ではあるが、本作のリアリティラインからは大きく逸脱するトンデモ能力なので、本作なりの「カメ型怪獣を飛ばすための理屈」が必要だった。
いろいろと検討した結果「火を吐く能力の元となる燃料を使って固形燃料ロケット方式で飛ぶ」「甲羅の隙間から噴射しベクターノズル式で推力を偏向して方向転換する」アイデアに落ち着いた。点火すると燃料を使い切るまで止められず、基本的に一度しか使えないというなかなか渋い設定に。
さらに進化すれば多段式になって短距離から長距離まで自在に飛べるようになると思われる。
・眉間からジャックナイフ
サバ頭の剣を装備しているので忘れがちだが、主人公はサバ頭の身を食っているので身体から高周波振動ナイフを生やす能力は当然獲得している。実はすでに甲羅の縁が高周波エッジになっていることに本人が気付いていない説も。
・シンプルな噛みつき攻撃
「カメで良かった」が合い言葉の本作の最後の決め技が「素早く首を伸ばして噛みつく」というカメ本来の身体能力というのも乙なもんでしょ?
■夢オチについて
本作の最大の課題は「人間か巨大怪獣化した理由をどうするのか。どうオチをつけるか」であるが、連作短編という形式を利用して毎回趣向の異なるオチを用意し、しかし目覚めると怪獣に戻っている→最終回で真相が明らかになるが「どうせこれもまた夢オチなんだろうなー」と主人公が思うところで終わるというのは当初から想定していたエンディングでした。
誰かが同じようなネタで書こうとした時に使えそうなネタを先に潰しておくという邪悪な意図は当然あります(暗黒微笑
しかしいざ最終話を書いてみると予定通りすぎて少し物足りない。もうひと捻り欲しい。きちんとオチていない気がする――
というわけでこの話はもう少しだけ続きます。
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