第30話 オタクのご褒美


2月も過ぎ、3月となった。

年度末であり、学業の卒業シーズンなどせわしなくそして切なさと虚しさが

交錯する、そんな季節となった。

自分らはそんな青春的な感傷から卒業して結構経つがそれを考えると

ヨメ共々哀しくなったのは内緒でここだけの話です、ハイ・・・

そんなこんなを考えながらボクらは確定申告に関する書類のまとめを行っていた。

資料と称して色々買い込んだのも災いしてかレシートのまとめだけでも精一杯という有様で

ボクもヨメもヒイコラ言いながらそれらをまとめていく。

「ヒィィィィ・・・疲れたよぉぉぉ・・・」

ようやく書類を纏めて上げてひと段落着いたのもあってかヨメは机に空気の抜けた風船の様に

だらりと突っ伏していた。

かく言うボクも書類仕事の疲れを抱いており、一休みの為にカフェオレを淹れていた。

「はい、どうぞ」

「あんがと。(コーヒーを飲む)・・・ンー、疲れた時の糖分と苦味が身体に染みるぅぅぅぅ!」

砂糖とミルクを入れたカフェオレの苦味と甘味が全身に伝わる様子を背筋を伸ばして体現するヨメを

見てボクは笑みをこぼしながら自分もカップに口を付ける。

確定申告の書類は専門の方にやってもらってはいるがそれでも自分らである程度は出来るようにと

サイトの書き方などと睨めっこしながら格闘を続けていた。

これが中々、創作とは楽しく出来ているからこそ疲労も苦労もあってもメンタル面ではそう問題はなかった

のだが堅苦しさ故なのかヨメ共々かなり苦労と疲労感がいつもより上だと感じていた。

「ふぅ・・・確定申告に限らずこの手の書類作成は何故か妙に疲れる・・・」

「ホント・・・緊張感というかプレッシャーがのしかかってくるのよね」

飲み干したカップをテーブルに置くとヨメは自分の肩を揉む。

それを見たボクは「揉んであげようか?」と振るとお願い、と答えたので彼女の肩を揉む。

気持ちいいのか、喘ぎスレスレな声を出していた。

「アアン、そこ気持ちイイ・・・」

「・・・夫婦だから良いけども何というか、背徳な感じを抱いてしまうのはなんでだろうな」

「ええ、でも気持ちいいのは事実だからそこは別に・・・ン、いい・・・」

なんだかこっちが恥ずかしくなってきた。

他の友人たちだと多分「羨ましいぞー!!」「〇してでもうばいとる」「お・のぉぉぉぉxれ!!」

とか色々罵られるのが容易に想像できた。

無意識だったのかその想像にちょっと吹き出してしまっていたらしく、ヨメがどうしたの?と

猫の様な上目遣いで見てきたので大丈夫だよと笑みで答える。

「ありがとう。気持ちよかった~じゃあ今度はキミの番ね?」

「え?」

不意打ちだった為かボクは目がテンになった。

照れた表情を浮かべながら、嬉しそうにこちらを見ながら

「だって私だけご褒美貰うのは・・・なんだか罪悪感がある、というか・・・ね?」

その言葉にボクは微笑みながら「わかったよ」と頷く。

それを見た彼女は「リクエストに応えるよ」と大はしゃぎ。

彼女とのこのやり取りこそがボクの最高のご褒美だと心からそう思った。

春の訪れを感じるそんな日の出来事

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