第23話 オタクの配信

5月。ゴールデンウィークも過ぎてはいるがまだまだ閑散な日々が続く今日この頃。

ボクはいつもの様に執筆活動の毎日に勤しんでいた。

しかし、ネタはあるのだが何故か中々作業が進まず、執筆が停滞と言った感じとなっている。

「・・・ちょっと一服するかな」

煮詰まっている現状は良くないと考えたボクは少し背筋を伸ばして休憩しようとしたその時、

ヨメがノックと同時に部屋のドアを開けて入ってきた。

「どもー、進捗どうー?」

「ハーイ・・・ご覧の通り、煮詰まっておりマース・・・」

背もたれに身を任せながらボクはヨメにそう答えるとヨメは若干苦笑した顔を浮かべながら

「ちょっと部屋出てコーヒーブレイクしよ。空気の入れ替えも大事大事」

部屋には空気清浄機があるがヨメが言っているのは煮詰まったボクの現状を察したことであると

理解してわかった~と言いながら椅子から身体を離し、リビングへと足を運ぶ。

「作業進まない?」

コーヒーを机に置きながらヨメはそう言ってくる。

ボクは受け取ったコーヒーに砂糖と牛乳を入れてかき混ぜたカフェオーレ風を口に入れた後、口を開く。

「うん、構想は固まってるんだけども…なんというか…筆が進まない・・・」

カフェオレコーヒーを飲みながらボクはため息も吐いた。

今ボクが置かれている状況はいわゆる『描(書)きたいけどもこうモチベが湧かない症候群』に陥ってるのだ。

症候群やシンドロームと言っていいのか少々微妙かもしれないがネタはあるのだが

中々執筆に移行できない(してはいるが筆が中々進まない)という状況なのだ・・・

描きたい書きたいという気持ちは沸き立ってるのに中々筆が進まないということは以前にもあったのだが

ここ最近はかなり頑固に近い感じで抜け出せなくなっているのが現状だ。

「あー、なんとうか殻に籠っているというか覆われた感じになってるんだよなー何かそれを破る方法はないものか」

「・・・」

ボクの言葉にヨメはしばし沈黙した後、ポンと手を打つ姿勢をしてボクにこう言うのであった。

「そうだ、配信しよう・・・!!」


ヨメからの意外なワードにボクは一瞬、理解が追いつかなかったがすぐに思考を再開させ

「どうしたの急に?」

「最近、色々あって新しい空気を据えてないじゃない?だからこそ、殻を破る意味も込めてネット配信するのもありかと思うのよ」

確かに、とボクはヨメの説明に相槌を打つ。

今の状況下だとできることは限られている上になんだかんだと考えも固まってしまう。

それを考えれば配信を行うのも一つの手なのかもしれない。

「けど何をするんだい?ゲーム配信するにしても色々とあるだろうし」

「そこら辺は色々調べた上で注意してやればいいと思うし、気分転換も兼ねてるのも考えれば気軽にやってもいいと思うけどね」

そうかもしれない、と考えたボクはふと気づく。自分は配信用の器材を持っていなかったことに

それに気づいたのかヨメはドヤ顔ともいえる様な不敵な笑みを浮かべ

「こんなこともあろうかと用意はしてあるのですよ」

「いつの間に?あ、随分前に通販で何か買ってたのは!?」

ご明察~♪と言ったヨメの顔はとても嬉しそうだった。

「それじゃあどんなゲームならいいのか色々調べて今度配信していこうか。テストも兼ねて」

「そうだね・・・そうなるとちょっと色々用意も必要かもね。イラストとか」

「そこは任せて。伊達に絵を仕事にしてはいませんよ♪」

「・・・その反応、もしかして実はずっと機を伺ってた?」

ボクの言葉にヨメは鼻歌をしながらそそくさと自室に入ってたのを見届け、苦笑交じりを浮かべながらも

コーヒーのお替りを入れて自分もまた自室に戻っていた。

後日、ヨメと一緒にゲーム配信を行い、知り合いたちと語り合いながら気分を新たに作業を完了させたのはまた別の話。

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