第13話オタクのストレッチ

「ぬっ…!くっ、おああああっ!!」

いつもは聞いたことのないような叫びをあげるヨメ。

「ふっ!かぁ、あああああああ!?」

喘ぎと言ってもいいのかはばかる様な声を上げ、

「グッ、ギギギギギギギ…ガッ!!?」

もはや呻き声と言っていいのかわからない声を上げ始める始末。

ヨメの表情も何とも表現し辛いことになってる上に本人の為にも文面に起こすのも遠慮しておく(後が怖い)

「大丈夫?もうやめておく?」

「ま、まだ大丈夫…もっと…押してぇ…」

心配するボクの言葉にしんどそうな感じの声を出しながらも続行を促すヨメ。

ボクらがやっているのはマットを使ったストレッチの真っ只中で今はヨメの背中をボクが押している状態だ。

ヨメが悲痛な声を上げているのは彼女がガチガチの状態とまではいかないまでも結構硬くなっているからだ。

タンクトップとスパッツというストレッチに適した姿をしたヨメの姿は絵的にも中々艶やかで健康的な色っぽさがあるシチュエーションだと思ったのだが

今のヨメにはそんなことを意識している余裕がなく、少々お見せできない様な表情を浮かべているのが残念だが仕方ないとおもった。

ボクはそのフォローとして背中を押しているのだがさっきから上述するような声を上げているのである。

「ちょっと休憩しよう。これ以上やると流石にボクもキツイ」

少なくとも先の悲鳴とも言い難い声を上げてるヨメを見ては罪悪感も抱くというのもあったが

ボク自身もちょっと疲れたのもあって休憩を入れようとしたのは事実。


「ウウ、最近運動不足気味だったからストレッチで動かそうと思ったらこの体たらくとは…(泣)」

「まあボクもヒトのこと言えないからそう嘆くことじゃないよ」

涙声で自分のだらしなさを嘆くヨメに水分補給の為の麦茶を渡しながらそう答えるボク。

「やっぱ急にストレッチしても身体がこうじゃダメねぇ…」

「そうだね、以前ネットで見たんだけども軽めの運動としてはラジオ体操がやっぱいいみたいだよ」

以前、ちょっと運動しなきゃと思ってそれ関連の調べものをしていた際に動的ストレッチという言葉を

知って調べてみるとラジオ体操がそれに近いということだ。

「なるほどね、確かにラジオ体操なら運動不足でもすぐにできるストレッチね」

納得するように頷くヨメであったが同時に何かを思ったのかボクに向かって言葉を投げかける。

「そういえばさ。静的ストレッチってさ、言葉だけに出すとさ」

「ハイアウト」

先手必勝の如く、ボクはヨメの言おうとしたセリフを遮る。

「なんでー!まだ言ってないじゃない!?」

「静的ストレッチって出た時点で大体何を言うのかわかってたよ!!」

「いいじゃないー、家にいるの私たちだけなんだし~♪」

そんなこんなで梅雨も終わりに近づき夏が始まりかけたそんな日の出来事。

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