プロットとシナリオの中間点

 僕は、望月と逃げることになった。

「一緒に逃げて」

「了解」

「じゃあ、スピード上げるわよ」

「待ってくれ。荷物が重い」


「モタモタしてると追いつかれるわ」

「僕はもうダメだ。君だけでも逃げてくれ」

「何を諦めてるの、諦めない心はどうしたの?」

「諦めない心?」

「そうよ。郁弥くんにはあるはずよ。諦めない心が!」

「そうだ、僕にはあるんだ。諦めない心が!」

 すると、僕達の前に渡辺さんが車に乗ってやってきた。


「郁弥様、こっち」

「渡辺さん!」

「車に乗って」

 僕は、渡辺の手招きで逃げ切ることに成功した。もちろん、望月も一緒だ。


「さすがは郁弥様やん」

「一時はどうなるかと思ったよ」

「ははは、心配かけてごめんね」

「心配? そんなんしてへんよ」

「そうよ。だって郁弥くん、貴方には」

「うん。そうだね。僕には諦めない心があるんだ」

 こうして、僕は『諦めない心』を思い出すことができた。




 僕は、菱川と七海が就任すると聞いて、お祝いに行った。

「2人ともおめでとう」

「偉いでしょ、私達」

「もっと褒めなさい」

「仕立て屋を継いだ菱川さんも、学園の理事長になった七海さんも、偉い!」

「どっちが偉い?」

「そりゃ、私よね」

「何で? 仕立屋の社長の方が偉いわ」

「学園の理事長の方が偉いわよ」


 僕は、懐かしい気持ちで2人の争いを眺めていた。心配しなくても、2人の喧嘩は必ず仲直りする。そんな時は決まって……。

「ま、郁弥くんに比べれば」

「私達は偉いわよね」

「ははは、いつもの流れだ」

「郁弥君は、未だに何事も為してないもの」

「就任さえしていないわ」

「くっ、くそう。就任さえしていれば……。」


「ま、郁弥君にも、就任の機会があると思うわよ」

「そうね。その気になればの話だけどね」

「本当? 僕にも就任できるかな」

「出来るわよ」

「今直ぐにでもね」

「やったぁ、今直ぐに就任するぞ!」

「おめでとう。これで郁弥君も」

「立派な『昌平ヒルズ』の社長よ」

 勢いに任せて僕は、父親の留守をいいことに自分も就任することに成功した。就任したのは、実家のシェアハウス、『昌平ヒルズ』の社長だ。


「偉いわ、郁弥君」

「『立ち向かう姿勢』は、母親譲りね」

「そうさ。僕は母さんの子だ」

「今の『昌平ヒルズ』は、借金5億円よ」

「『立ち向かう姿勢』が無ければ、就任出来ないわ」

「あっ、ああっ」

「郁弥君の『立ち向かう姿勢』は、さすがね」

「決して真似出来ないわ」

「『立ち向かう姿勢』、最高!」

 こうして、僕は『立ち向かう姿勢』を思い出すことに成功した。借金5億円と共に。


 次の日、僕は、担任の北條に卒業出来ないと言われる。

「社長なんかやってる場合じゃないわよ」

「ハイッ!」

「その前に、テスト頑張んなさい」

「ハイッ!」

「低スペックの貴方でも、40点位取れるでしょう」

「ハイッ!」

「いい? 菱川さんと七海先生を見習いなさい」

「ハイッ!」


 僕は、どうすることも出来ず、菱川に相談した。菱川は親切にも、いいアドバイスをくれた。

「郁弥君、貴方には、勇気が必要よ」

「勇気?」

「そう。『人を頼る勇気』よ!」

「『人を頼る勇気』……。」

「困った時はお互い様よ!」

「分かった! 頼ってみる」

「うん。その調子よ」

「早速、七海さんのところへ行ってみるよ」

「えっ、私じゃないの、私じゃ?」

「今、何か言った?」

「なっ、何でもないわ(私、忘れていたわ。郁弥君、馬鹿だった)」


「ねえ、七海さん」

「何よ。今、藤田と話していたのに」

「勉強、教えて欲しいんだ」

「勉強? 無理よ。私、理事長なんだから」

「そっか。そうだったね。これは困ったぞ」

「私で良ければ、力になるわよ」

「本当? ありがとう!」

「大丈夫? 藤田、38人中37位でしょう」

「だから、郁弥君にだけは教えてあげられるのよ」

「僕は、誰にでも教われるんだ。ビリだから」

 3日の特訓の末、僕は藤田と勉強し成績を上げることに成功した。


「それにしても、すごいわね」

「『人を頼る勇気』が半端ないわ」

「ああ、僕は『人を頼る勇気』だけは、誰にも負けないよ」

「普通、出来ないわよね」

「でもこれで、『人を頼る勇気』を持って卒業出来るわね」

 こうして、僕は『人を頼る勇気』を思い出すことに成功した。そして、卒業証書を手に入れた。


 卒業祝賀会、僕は久しぶりに従兄弟の陽介に会い、些細なことで喧嘩になる。

「俺なんか、高卒で借金抱えてるんだぞ」

「なにっ、俺だって同じだぞ!」


 僕は、陽介とはつい競い合ってしまうのだ。

「俺の車を見てみろ。ピカピカだろ」

「昌平ヒルズを見てみろ。蔦の葉が眩しいぜ」


「この車、400万円だぜ。ま、380万はローンだけどな」

「この物件、借入金5億だぞ」

 僕は、この勝負に勝つことが出来た。悔しがる陽介の顔は見ものだぜ。


「くそう。次は、アイドルのプロデューサーの腕前で勝負だ」

「望むところだ」

 こうして、陽介との喧嘩は、プロデュース勝負に発展するのだった。でも、プロデューサーって、何するの?



 僕は、陽介の陣容を見せつけられ、やる気をなくした。何といっても、あいつの親父は、芸能事務所の社長なのだ。

「どうだ、みんな有名人だろ」

「ああ、みんな知ってる人だ」

「郁弥、お前には勝ち目ないぞ」

「ちくしょう。こんなんじゃ、勝ち目がない」


 その晩、僕は夢を見た。それは、僕の近くにいてくれた人達からの応援だった。或いは、駄目出し?

「郁弥くん、諦めないで」

「心を強く持たんと、駄目やんか」

「そうよ、今こそ立ち向かうのよ」

「その姿勢を崩しては、駄目よ」

「時には、人を頼るの」

「勇気を持たなきゃ、駄目!」


(そうだ、望月さん、みんな。僕は頑張るぞ)

 僕は、少女達に励まされることで、立ち直った。


「よし、みんなで頑張ろう!」

「でも、何で菱川さんと」

「北條先生と」

「七海理事長なのよ」

「望月さんも渡辺さんも藤田さんも、ギャラが高すぎるんだ」

「なら仕方ないわね」

「私達なら、安いものね」

「でも、ちくわ3本とか、安過ぎよね」

「さあ、先ずは撮影会で勝負だ」

「……。」

「……。」

「……。」

「どうしたっていうの?」

「ファンが誰もいないわ!」

「あいつらには、あんなにいるのに」

「一体なぜ……。」

 こうして、撮影会勝負となるが、実力の差を見せつけられる結果となった。



 僕は、笑顔を作るには、決めポーズが便利だと気付くことが出来た。

「なるほど!」

「私達には」

「決めポーズがなかったってことね」

「早速みんなにも、決めポーズを考えてもらおう」


 しかし、決めポーズ習得への道は険しかった。そこで僕は、『諦めない心』を発動した。

「みんな、諦めない心で、考えよう」

「でも、どうやって考えたらいいのかしら」

「諦めちゃダメだ」

「いざやってみると、難しいものね!」

「諦めない、諦めない。一休み一休み」

「そもそも、決めポーズって、何?」

「それは、私が教えてあげよう!」

「そっ、その声は?」

「井原よ」

「井原さん! 伝説の踊り手さんだ!」

「でも、何故こんなところに?」

「そうよ。急に現れるなんて、普通じゃないわ」

「私、ここに住んでるのよ」


「じゃあ、是非ともご指南を!」

「その代わり、家賃タダにしてね」

「さすがは井原さん」

「PV400万超は伊達じゃないわね」

「なるほど。振付以上にバリエーションが豊富なんだわ」

「みんなも、大分決めポーズが分かってきたようね」

「はい、これなら勝てる気がするわ」

「よし、じゃあ、次はライブで勝負だ」

 借金は5億200万円に膨れ上がったが、僕は、伝説の踊り手を仲間に加えることに成功した。そしてライブ当日を迎えた。


「……。」

「……。」

「……。」

「どうしたっていうの?」

「誰も聴いてくれないわ」

「あいつらは、あんなに笑顔でステージに立ってるのに」

「一体なぜ……。」

 こうして、ライブ勝負となるが、全く歯が立たない結果となった。


 僕は、メンバーが本当の笑顔になるには、かわいい衣装が大切だと気付くことが出来た。本に書いてあったのだ。

「それを、気付いたと言ってしまうとは」

「さすがね、郁弥くん」

「確かに笑顔が溢れるわね」

「よし、早速かわいい衣装を作るぞ」


 かわいい衣装作りは、思った通り難航する。そこで僕は、『立ち向かう姿勢』を発動した。

「みんな、立ち向かう姿勢で乗り越えよう」

「でも、かわいい衣装なんてどうすれば」

「立ち向かわなきゃ駄目!」

「いざ作ろうとしても、アイデアが浮かばないわ」

「姿勢を正して考えるんだ」

「そもそも、かわいい衣装って、どんなの?」

「それは」

「私達が教えてあげてよう!」

「そっ、その声は?」

「中田、にと」

「同じく、しお」

「2人合わせて」

「なかたにとしお!」

「中田姉妹! 伝説のコスプレイヤー!」

「でも、何故こんなところに?」

「そうよ。急に現れるなんて、普通じゃないわ」

「私達、ここに住んでるのよ」


「じゃあ、是非ともご指南を!」

「その代わり、家賃タダにしてね」

「さすがはなかたにとしおさん」

「フォロワー数40万超は伊達じゃないわね」

「体型に合わせてバリエーションがあるのね」

「みんなも、大分かわいい衣装が分かってきたようね」

「はい、これなら勝てる気がするわ」

「よし、じゃあ、次はもう1度撮影会で勝負だ」

 借金は5億600万円に膨れ上がったが、僕は、伝説のコスプレイヤーを仲間に加えることに成功した。そして2度目の撮影会当日を迎えた。


「ありがとうございます……。」

「また来てくださいね……。」

「次もよろしくお願いします……。」

「どうしたっていうの?」

「数をこなしていても、手応えがないなんて」

「あいつらは、あんなに沸かせているのに」

「一体なぜ……。」

 こうして、再び撮影会勝負となるが、惜敗した。



 僕は、会場を沸かすには、優れた楽曲が必要だと気付くことにした。本当は、最初っからそんな気がしていたのだが。

「私もそんな気がしていたわ」

「さすがね、郁弥くん」

「確かに会場が沸くわね」

「よし、優れた楽曲を作るぞ」


 優れた楽曲作りは、思った通り難航する。そこで僕は、『人を頼る勇気』を発動した。

「どうせ駄目なら、人を頼るんだ」

「でも、優れた楽曲なんてどうすれば」

「人を頼れば済む話さ」

「いざ作ろうとしても、アイデアが浮かばないわ」

「ま、無理でしょ。人を頼らなきゃ」

「そもそも、優れた楽曲って、どんなの?」

「それは、私が教えてあげてよう!」

「そっ、その声は?」

「長谷川真洋、見参」

「いよっ、待ってました」

「でも、何故こんなところに?」

「そうよ。急に現れるなんて、普通じゃないわ」

「私、ここに住んでるのよ」


「じゃあ、早速お願いします」

「でも、高くつくわよ」

「焼きそばパン、3つでどう?」

「せめて、4つにしてくれる」

「さすがは、長谷川さん」

「CD売上累計40枚は、伊達じゃないわね」

「いくつものバリエーションから会場の雰囲気で決めるのね」

「みんなも、かなり優れた楽曲が分かってきたようね」

「はい、これなら勝てる気がするわ」

「よし、じゃあ、次はもう1度ライブで勝負だ」

 借金は5億600万円と焼きそばパン4つに膨れ上がったが、僕は、元ボーカリストを仲間に加えることに成功した。そして2度目の撮影会当日を迎えた。


「はい、はい、はいはいはいはい!」

「うりゃー!」

「おい、おい、おい、おい、」

「どうしたっていうの?」

「今迄とは比べ物にならないほどの手応え」

「あいつらまで、応援してくれているわ」

「一体なぜ……。」

 こうして、再びライブ勝負となり、ついに勝利する!

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