第2話
ザインは本当に美味しそうにひじりの上半身を、どこが舐められているかなんて考える暇がないくらいにどろどろに舐めました。ひじりはこれから起こることを考えたからとかではなくただとにかくザインの全部から逃れようとしてベッドから降りようとしました。手を振り払って背を向けることがなんとかできたひじりの脚と、サスペンダーを引っ掴んでザインはひじりを組み敷いて真正面から見る姿勢に軽々引っ張り込みました。そのままサスペンダーごと力尽くでズボンが下げられた時、なすすべのなさを理解するよりも早く、勝手に声が出ました。
「やだ、やだっ、やだよ、ッザイン、ザイン、これ以上ダメ、血飲ませてあげるから一旦やめて……」
自分の声を、久々に聞いたみたいな気がしました。涙が出てきました。それでザインがやめてくれると思ったわけではないのです。ただ言ってしまっただけなのですが、その拒否よってザインはもっと余裕がなくなったみたいな顔をしました。しまったと思ったけれど、どこからが落ち度だったのかなんてわかりません。ザインの余裕がない顔なんて初めて見たかもしれません。ザインの目は、ゲロに突っ伏していても、死にたいと言っていても、どこか、必ずどこか無邪気な光を湛えていました。今ザインの目は、全然無邪気じゃありません。ズボンはすぐに剥ぎ取るみたいに片足だけ脱がされました。ザインはきっとひじりを侵食してしまうために一番手っ取り早い形をとろうとしているだけですが、それだけで充分過ぎるほどに怖いのです。
二度目の空 杓井写楽 @shakuisharaku
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