幕間小話「のっぺらぼう」
あたしは赤眼のセンリ。芸を売って
秋の夜風に虫鳴く道を、ぷらりと一人そぞろ歩くと、道陰に泣く娘がいた。
「どうしましたい、娘さん」
「ないのです」
娘が振り返る。
「私の顔がないのです」
その白いのっぺらぼうをあたしは指で突き返す。
「ほれ、顔だ」
すると娘の顔に綺麗な目鼻と口が浮き上がり、あたしは手鏡を見せてやる。
「私の顔」
そう残して娘は消えた。
顔は女の大事だ。二度とどこかになくしなさんな。
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