幕間小話「狐の嫁入り」

 あたしは赤眼のセンリ。芸を売って生計たつきに変える芸人さ。

 今日は座敷に行く途中、面白いもんに出くわした。


「どうぞ祝い酒を一杯」


 奏楽に続く花の輿。狐の嫁入り行列だ。

 袴姿の狐の兄さんが勧める酒を、せっかくなんで一杯頂戴。


「殿方はどちらだい?」


 狐の兄さんが指差す先には簀巻きにされた花婿の姿。


「狐を騙そうとでもしたのかい?」


「恥ずかしながら」


 喚く花婿は行列とともに流れていく。

 男は誠意さ。酒の分だけ祈っておくよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る