幕間小話「雨宿り」

 あたしは赤眼のセンリ。芸を売って生計たつきに変える芸人さ。

 今夜は座敷を上がれば情け知らずの大雨だ。刻は生憎の丑三つ時。こういう時は“何か出る”と昔から決まったもんだ。


 ほれ、雨に魚が泳いでやがる。


 牛ほどもある黒い出目金が、軒に独り雨宿りするあたしを見てにたりと笑った。煩わしげに手で払うと、出目金は巨体をくゆらし薄墨を溶かすように雨に消える。


 独り。


 待ち人知らずで何が悪い。そんな愚痴も雨底深くに消えやがった。

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