第4話 サイクルショップ
やって来たのは自宅近くのサイクルショップ。
「うわー、自転車たくさん!」
こんなにもいろんな種類の自転車があるなんて、考えたこともなかった。ハンドルもタイヤも大きさも大小様々。ゆりが乗ってるのと似たようなのもたくさん並んでいる。どうやって選ぶのか聞こうとすると、ゆりは馴染みなのか、ショップのお兄さんと話し込んでいた。
「コト、初心者だし、若いからこんなのどうかって」
ゆりに引っ張られて店の奥に行くと、そこには、ピンクと水色の控え目な差し色のある純白の自転車があった。
*ルイガノWTR (color:MATT LG WHITE)
フレーム:6066アルミ コンポ:tiagra ウェイト:9.6kg
琴は瞬間、ウェディングドレスを思い起こした。
『きれい…』 運命の出会いってこんな感じなのか。
「ビギナー用としては十分の性能ですよ。ディレーラーはティアグラだけど少し慣れたらホイールを変えたら軽くなります」
ショップのお兄さんは微笑んだ。意味不明な事言ってるけどまあいい。きっとこの子は白馬の王子様なんだ。そして私はプリンセスになる。琴はそーっと撫でてみた。本当にきれいな白だ。ピンクと水色の帯も可愛い。サドルだって真っ白だ。
ゆりも
「やっぱルイガノはお洒落だねー。差し色の使い方なんて、わきまえてる」
「この白はね、LGホワイトって言って人気カラーですよ」
ここで琴は思い出した。ゆりが言ってた「結構高いよ」の一言を。
「これって幾らなんですか?」
「定価は十二万五千円だけど、去年のモデルだし、ゆりちゃんの紹介だからおまけしますよ。他にもいろいろ入用になるしね」
「ええっ!じゅ、じゅう・・・にまん? そんなにするの? 私が乗ってるの九千八百円だったよ?!」
「びっくりするよねー。でもねママチャリとは違う乗物だから。乗ったら判るから。それにロードバイクの中では安い方なのよ」
ゆりは経験者の余裕で解説した。
「あー 取り敢えず… 保留でお願いします(汗)」
ママに相談しなくちゃ。しかし何をどう相談するのか?いきなり、自転車欲しいからお小遣い十二万円前借させて、なんて言えたもんじゃない。そもそもお小遣いの何年分よ。
「はは、高校生だから当然だよ。しっかり悩んでね。一応キープしておくよ」
ショップのお兄さんが流してくれたから、琴は少し気を楽にしてショップを後にした。
「ゆり、もうちょっと待ってね。これは本格的な対策が必要だ」
「いーよ、ってかそれが楽しいのよ。でもなあコトがロード乗ってくれたら、あたしもツレができて嬉しい。頑張って対策してね」
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