第3話 琴とゆり

「あれ、ホントに来たんだ、タカラジェンヌのコトだっけ?」

「うん、私も帰宅部だから。タカラジェンヌは親の希望だったよ。挫折したけどね。」

「本当に受けてたの?」

「そだよ、残念ながら滑り止めのここに来たんだ。なーんてね。実は受かりっこないってバレエの先生に宣言されたんだけどね。まあいい思い出だよ。親も観念したみたいだし」


「へえ、幻のタカラジェンヌが目の前にいるなんて、ちょっとびっくり。初めて会ったよ、そんな人に」

「はは、落ちた子はたくさん居るよ。でさ、それじゃなくて、羽田さんが乗ってたああゆう自転車ってどこに売ってるの?」

「ゆり でいいよ。勿論自転車屋さん。スポーツバイクを扱ってるショップが所々にあるからね」

「へえ、この辺にもある?」

「あるよ、あたしがいつも行ってるとこで良ければ、連れてってあげるよ。何?コト興味出たの?」

「うん、ちょっとね。ダイエットにもなりそうだし」


「でも買うとしたら結構高いんだよ。サイズとかも合わせなきゃけないし」

「へえ、そういうものなのか。でも、この間、ゆりカッコよかったからさ、なんかいいなあって。私、中学は自転車通学だったから自転車乗り慣れてるし」

「ああ、ママチャリとは随分違うんだけどな、ま、バレエやってたんだったら大丈夫か。今から行く?秋月山の近くだけど」

「おう、望むところよ。秋月山なら同じ駅だし」


 トントン拍子に話が進み、琴はゆりに連れられて学校を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る