第14話
「ここが凛様のお部屋です」
カオリさんに案内してもらった部屋のドアは、俺のイメージしていたものとはかけ離れたごく一般的な木製のドアだった。
ドアにはピンクのプレートがかかっていて「Rin’s Room」と書かれていた。なるほど、誰が見ても凛の部屋だとわかる。ただ、お嬢様感がないのはなぜだろう。
「では私はここで失礼します。何かあったら大きな声で私を呼んでください。すぐに駆け付けます。それと、帰るときも私を呼んでください。それではごゆっくりどうぞ」
深々と頭を下げるカオリさんを見ながら、この人も大変だなと思った。仕事とはいえ、自分より年下の人に頭を下げなければならないのだ。
「ありがとう、カオリさん。カオリさんも無理しないでくださいね」
「ッチ、馴れ馴れしく接しないでください」
「今、舌打ちしたよね?」
「何の事でしょうか?そのようなことはしていませんが?そもそも私がそのようなことをする人に見えますか?」
睨みながら、さらりとしらを切るカオリさん。まぁ、いいんだけど。あと、威圧がすごい。怖い。
やってみるとわかるが、女の子の部屋に入るというのはとても緊張する。ドアの向こう側には未知の世界が広がっているはず……ちょっとした冒険気分だ。
「えーと……智樹ですけど……」
「入りなさい。心の準備はできているわ」
相変わらずツンツンとした返事が返ってくる。
それはそれとして、「心の準備」とはどういうことだろうか?
疑問に感じながら、ガチャリとドアを開ける。
まず目に飛び込んできたのは、ピンクを基調としたかわいらしい部屋。
ところどころに人形が転がっていてとても女の子らしい。そして思ったより広くない。
それでもって次に目に飛び込んできたのは床に正座している全裸の凛だった。
……ん?…全裸?
「わーーーーーー!!!」
俺は一応、上から下まで確認した後急いで部屋から出てドアを閉めた。
ええ!?なんで全裸なの!?…ラノベか!!
「あのー凛さん?なんで全裸なんでしょう?」
「?男子を自分の部屋に招待するとはこういうのが常識だと思うんだけど?」
「そんな常識あるかー!!服を着てください!今すぐ!」
「もー、しょうがないわねー。まったく、男子ってこういうのに弱いのよね」
どうやら服は着てくれるらしい。
それにしても胸が小さくてかわいかったな。今更だけど。
5分後
遅いなー。服着るだけなのにこんなに時間かかるものなのか?大変なんだな女の子って。
さらに5分後
え?服着るだけだよね?さすがに遅くない?ちょっと心配なんだけど。
さらに5分後
「おーい、凛さーん。大丈夫ですかー?」
俺は不安になってドアをドンドンとたたきながら、安否の確認を試みる。
…………。
「おーい!凛さーん!大丈夫ですかー!」
…………。
「おーい!!凛さーん!!大丈夫ですかー!!」
「あー!もう!うるさいわね!もう少しここでおとなしく待っときなさいよ!」
「いや、でも、時間かかりすぎでは?」
「そんなことないわよ!女の子のオシャレは時間かかるの!」
そ、そうなのか。知らなかった。大変だなー。
さらに10分後
「入っていいわよ」
約30分待たされて、正直イライラしていた俺はその言葉に密かに歓喜していた。
恐る恐るドアを開ける。30分もかかるファッションとはいったいどんなものだろうか……
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