第3話

 告白しようとしている女の子に怒鳴られた。


 俺は初めて告白をやったからいまいちわからないが、これが普通なんだろうか。


 彼女はさらに不機嫌そうに怒鳴る。


「電車の中なんかで告白しようとして、人の迷惑になると思わなかったの!?それともあんたはそんなことも考えられない、常識はずれのおバカさん!?」


 彼女の遠慮のない言葉が心にぐさりとくる。


 年下の女の子にここまで馬鹿にされたのは初めてだ。


 しかし、確かに、俺の常識外れの行動で彼女に迷惑をかけてしまったことは間違いないのだから、ここは素直に頭を下げることにした。


「すいませんでした!!」


 しばらくの静寂の後、彼女は全然納得してなさそうにまたもや怒鳴る。


「はい、はい、わかりました!特別に許してあげる」


「あ、ありがとう!」


「べ、別にお礼を言われるようなことでもないわ。それより早く私の前から消えてくれない?」


「え?」


「何よ?」


「あ、あの……」


 しょうがない。こうなったら言うしかない!このチャンスを逃したらもう終わりな気がする。



「あなたのことが前から好きでした!俺と付き合ってくれませんか!」



 全身全霊をかけてはなったその言葉は、何の面白くもない、何の変哲もない告白になってしまった。今の俺にはそれが精いっぱいだった。


 あとは返事を待つのみ……。


「あ、あんた、バッカじゃないの!?よ、よくこんな状況で告白できるわね。いいと言うとでも思った!?」


 ですよねー。予想はしていたからそんなにショックは受けない。


 でも諦めきれないんだ。確かに彼女は、俺の思っていた真面目そうで清らかとはまるで違う。


 それでも彼女は可愛くてどうしようもないのだ。


「せ、せめてライン交換だけでも!」


「……いいわよ……」


「え?」


「だから!ライン交換くらいならいいって言ってんの!」


 え?マジで?いいの?俺は半ば信じられない気持ちで彼女とライン交換をする。


 彼女は、あまりラインが多いとブロックするからねとか、電話はかけないでとか、ブツブツ言いながら手慣れた手つきでスマホをいじっていた。


 ラインのアカウント名は松田凛。


「まつだ、りん?これって本名?」


「そうよ!わたしがあの有名な天才美少女・松田凛よ!覚えておきなさい!」


 有名なのか……?にしても、自分で天才美少女っていうのか。自己主張が激しいな。


「なんでライン交換してくれたんだ?」


 率直な疑問をぶつけてみる。


「べ、別にあんたなんかに興味ないんだからね!ただ、ちょっと……」


「ちょっと……?」


 凛は急にモジモジとし、顔を赤らめたて、こう言った。



「ちょっと、年下の男の子に興味があっただけ……。べ、別に変な意味じゃなくて、なんというか、そういう友達がいないから…、そ、そう!友達よ!友達!付き合うなんて論外なんだから!」



「年下の、男の子……?」


「あんた高1でしょ?わたし高3だから!」


 俺が好きになった美少女は年上だった。そして彼女は逃げる様に去っていった。



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