高くその旗を

 雄々しく旗を振って歩いていたはずなのに、いつのまにか誰もが泣いていた。

 サンセットストリートの1番端、黄色いレンガのアパートから、僕らは自由を求めて進んでいた。

「たしかにあのとき、僕らにはゴールが見えていたはずなんだ。それもただのゴールじゃない、まぶしくキラキラと輝いていた、偽りのないゴールだったんだよ」

 それがまさか失われてしまったとでも言うのだろうか。

 僕は右手で乱暴に目元をぬぐった。涙はいくらでも流れてきたけれど、それを認めたくなかった。

 唯一の正義。そんなものがあると本気で信じて、僕らはこの道をを歩いてきたんだ、それなのにどこで間違ってしまったというんだろう。

 振り返ると、サンセットストリートは太陽に照らされて眩しく輝いていた。そこには、僕がここまでたどり着くためにしかたなく撃った、何人もの屍が乱雑に転がっていたけれど、ストリートはやはりとても美しいと思った。

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