　一人になって考えることはきっと健全ではないから、思考を停止して死んだように眠ることにした。

　仕事のことも、友人のことも、そして恋人のことも。今の私には重すぎて抱えられない、ましてそのまま歩くことなんてできるはずがない。

「大人になってできることが増えて、私は自由で幸せな毎日を送れるのだと思っていた。けれども現実は複雑で、いつだってバランスを崩しながら、私の未来を不確実なものにしてしまうんだ」

　それはまるで甘い言葉で忍び寄る宗教家のように。

　くたびれた畳のにおいがして、古いアパートのワンルームは私のために用意された牢獄と変わらない気がした。ここに１０年以上暮らしながら、ここで落ち着いた気持ちになれたことはない。いや、住み始めたころは違ったのか。新しい生活に、希望が胸の奥からあふれそうになっていただろうか。

　それならば、いつから私は、閉じ込められるように生きる毎日を過ごしているのだろう。

　社会の中で、なんの役割も持つことなく、ただ命を消費するように。

　窓の外からは、国道を走る車のクラクションの音が聞こえていた。それは耳障りな警告音で、急かすような叫び声で。

　私の口から漏れた、微かな「助けて」を簡単に打ち消した。

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