葬列
四車線通りはこの街の基幹道路で、その名の通り片側四車線のバイパスだ。
17時を過ぎ、あたりが暗くなるころには、帰宅の車があふれかえって渋滞を起こす。
私はパールホワイトの軽自動車で、何の気もなく流しているFMを聴きながら、その渋滞に巻き込まれていた。上りも下りも両方向、車は列をなしてのろのろと歩くように進んでいた。夜は重く落ちていて、私の目の前には赤のブレーキランプが、反対車線には平行な二つのヘッドライトが、縦に連なっていた。それは遥かに続く光の延長線で、先の見えない連続性に、心が嫌な揺れ方をするのを感じた。これは、そうだ、はっきりとは言えないけれど。
「まるで、厳かな葬列のように」
ただゆっくりと、同じような光が続いている。
不意に後悔が胸を突いた。
あの時、いっそのこと大学へ残ればよかった。就職なんかしないで、研究の道に進めばよかった。それを推してくれる声もあったのに。
当時の私は、一社会人になることに何らかの価値を感じていて、みんなが卒業をしても尚、勉強を続けることを不毛だと思っていた。それが実体を伴う感情なのかもわからないまま。
みんなと同じように就職活動をして、みんなと同じように社会人になって。
「それで乗り遅れずに済んだと、勝手に思っていただけだったんだ」
渋滞は終わる気配を見せず、葬列は尚も続いていた。
FMからは、何年も前に流行ったラブソングが流れていた。私はカーラジオのボリュームを上げると、その懐かしい恋の歌に耳を傾けながら、まったく違う曲を鼻歌で歌ってみた。
それはきっと不協和音だけれど、私の一番お気に入りの音楽になる。そんな予感がした。
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