第27話
腕の中で旭が眠っている。
良い休日の朝だな、と思った。
窓から見える空は明るく、暖かい日差しが差し込んでいる。
夜中に書いた手紙を出さない方が良いのは、心の中を吐露し過ぎて普段口にしないようにしている事まで書いてしまっているからだ。
俺はもう、口に出してしまったから、引っ込めようもない。
元通りなど、最初から出来るはずも無かったのだ。
「んん」
旭が身じろいで、僅かに眉を寄せる。
覚醒の気配がした。
一度身体を伸ばすように顔を上げると、そのままゆっくりと瞼を開く。
何度か瞬きを繰り返す。
目の前の俺に焦点が合うと、ふにゃりと笑って「おはよう、伊織さん」と言った。
「おはよう」
口唇を合わせるだけのキスをする。
旭が求めるままにもう一度交わす。
恥らっているのに期待する顔をして、羞恥に包まれながら快感を望んでいる。この子は意外とこういった事に積極的な所があった。
口付けが深くなる。口唇に感触が残る。
「元通りに、しなくて良いですか」
「良いよ」
「夢じゃ無い?」
「夢じゃ無いよ」
安心するように微笑む彼に覆い被さり、首筋にキスをする。
身をよじりながら吐息を漏らす少年は年齢の割に色っぽく見えてたまらない。
下着の中に手を入れて性器を揉んでやると、それはすぐに反応を示し始めた。
「ん、んん」
腰を動かして、俺の手から逃げようとしているのか擦り付けているのか解らない。
「外はあんなに明るいけど、する? 昼間っから止めておく?」
意地悪く尋ねると、旭は身体中熱くし、泣きそうな顔になりながら「して」と応えた。
「して、ください」
「どれくらい?」
粘着質な音を立たせながら手の動きを速めると、彼は首を竦めて瞼をぎゅっと閉じる。
「あぁ、っ」
「どれくらいしたいの?」
「っ、いっぱ、いっぱい、あ、あっ、あっ」
「旭のエッチ」
耳元で囁くと、彼は簡単に吐精した。
細身の身体が弛緩していき、荒い息遣いが部屋に満ちる。
べちょべちょになった下着を脱がせ、手に付いた精液もそれで拭き取った。
脇腹を撫でると、敏感になっている皮膚はびくびくと震えた。
「僕ばっかり」
呼吸を落ち着かせ、旭が拗ねたようにそう口にした。
「ん?」
「僕ばっかり、気持ち良いの、嫌です。もっと好きにして良いのに」
まるで困ったように言うので、思わず声に出して笑ってしまった。
「わ、わら、僕は本当にそう思ってるのに!」
「ごめんごめん。俺は好きにしてるよ。お前が真っ赤になりながらよがるの見るの、楽しいんだ」
彼の額に口付ける。
小さい子供をなだめているようだな、と思った。
いや、実際歳の離れた子供なのだ。
しっかりしてきたものの、まだ細い手足。薄い胸元。すべらかな顎のライン。
未発達の身体と感情。
それらが、俺の腕の中で俺を求めている。
俺のものだ、と思った。
この人間は俺のものだ。
開き直ってしまえば愛しさばかりが込み上げて、どうしたら良いのか解らなくなる。
「俺もキス好きなんだ。旭からしてよ」
ねだると、旭はおずおずと首を伸ばし、控えめに下唇に触れてきた。
軽く食まれて、舌先がそこに触れる。
彼の首裏を支え、やりやすいようにしてやった。
それから夕方まで、しばらく布団の中で絡み合っていた。
彼の言う通り“いっぱい”したのかは彼の判断に任せるが、力の抜けた旭は今、後始末を終えてリビングのソファに寝そべっている。
「飯食える?」
「食べます」
「身体辛いよな。大丈夫か?」
「大丈夫です。大丈夫ですけど、あの、まだ気持ちがふわふわしていて」
動けそうにない、と旭が呟いた。
俺も近々夏休みを取ろう。
旅行に行くのも良い。
家に居るのだって良い。
彼と数日ゆっくり過ごしたかった。
この5年間で、まだ伝えきれていない事など沢山ある。
自分の事を、旭に話したい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます