第六章 8
育児日記。二二五五年、五月八日。午後十一時。
十九歳になった六人は、誕生パーティーが終わったあとで議事室に集まり、合議を開始した。
私はいつものように、隣室で通信を傍受した。
暗号化の解読に成功したのだが、子供たちは定期的に暗号を変更するので、ふりだしに戻った。そのせいで、通信音声は相変わらず不明瞭なままだ。
「途中経過――、必要なものを――」
「どこかの国と通信――」
「世界情勢が変わって――」
「憶測で――、命が懸かって――」
「虐殺――、公表――、危険――、新生ロシア人の――」
「――装甲車で――、――を越え――」
「ロボット兵――、無力化――」
「難しい――、――同型機だぞ――」
「昔、母さんが――、父さん――、プログラムを書き換え――」
「――父さんしか――」
「――脱走兵――、――捕まっちゃう――」
ここで子供たちは黙り込み、何やら考え込んでいる様子だった。
しばらくして、沈黙が破られた。
「――複製――」
「一年――、――鬼ごっこ――」
子供たちは鬼ごっこという言葉をきっかけにして、一斉に笑っていたようだった。
一年後に、何が起きるというのだろうか。
第五階層の研究施設や第一階層の工場で、何かを製造しながら勉強していることは把握しているが、それが関係しているのだろうか。
動向を把握し、あの子達がどのような未来を目指して動いているのかを知る必要がある。
妻には黙っておこう。きっと、第二世代の育児が手に付かなくなってしまうだろうから。
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