第23話 ミスコンのカラクリ ④
「ちょ、ちょっと! それって……」
慌てた様子で今日子が返す。
「そう。本当は投票されるはずの無い票であるミスコンに興味の無い女子生徒たちの票、つまりうちの学校の男女比率は1:1なので、学校生徒の約半数の票が白石先輩に流れるよう、岡田生徒会長がコントロールしたんだよ」
「確かに岡田生徒会長だったら、生徒会長という肩書きとあの女子に絶大な人気を誇るルックスで、票の取りまとめもそう難しくはないかもしれませんね」
神妙な顔で話を聞いていた徳井が言った。
「でも、ちょっと待ってください」
真美ちゃんが話に横やりを入れた。
「今の話だと、白石先輩は全校生徒の約半数の票を獲得するはずですよね。でも、実際に行われた投票では、全校生徒の80%に近い票を獲得したんですよね?」
「そう! 真美ちゃん! いいところに気づいたね。それが岡田生徒会長の誤算だったんだ」
「誤算?」
「岡田生徒会長のシナリオでは白石先輩が全票の40%、本命の七瀬さんが35%、対抗の虹野さんが20%、そして藤野さんが5%の得票で白石先輩が逃げ切るはずだったんだ」
「でもそれがどうして……?」
「簡単な話さ。想定外に男子の票が白石先輩に流れたんだよ。それは白石先輩を見てもらえば分かると思うけど」
みんなの視線が凛先輩に注がれる。
「え、えっ、な、何? わ、私……?」
確かに他の三人の出場者に比べても、凛先輩の綺麗さはワンランク上だと思える。
凛先輩が慌てている中、見ていた俺たちは納得したように顔を見合わせて話を続ける。
「確かに、本命の七瀬さんと比べても勝るとも劣らない容姿だよね……………………この性格のキツささえ無ければ……」
俺は後の方は、凛先輩に聞こえないように呟いたつもりだったんだが、しっかり聞いていたみたいで眉の上辺りをひくつかせながら作り笑顔で聞いてきた。
「徹くん? 今何か言った?」
「い、いや何も言っていないよ。気のせいじゃない?」
俺は凛先輩から目をそらして答えた。流石にみんながいる所で、凛先輩の逆鱗に触れて床に正座なんていやだからね。
「そうかしら? 何か私の悪口が聞こえたような…………」
「何を言ってんだよ。俺がそんな事言うわけ無いじゃないか…………あはははは……」
思いっきり作り笑顔で全力でしらを切った。
コホン!
「話を戻していいか?」
呆れたような顔で、俺と凛先輩を見ていた昌が、咳払いひとつして声を出した。
「ごめん、ごめん、昌」
「昌くんごめんなさい」
俺と凛先輩は昌に向き直って謝った。
「それじゃ、続けるぞ? さっき誤算って言ったのは、僅差で白石先輩が勝つ予定だったのが、ミスコン史上初の大差になった為に本命や対抗に賭けた連中が、岡田生徒会長が何らかの不正を働いたのでは無いかと疑いを持ち始めたんだ」
「それで、その賭けに負けた連中が、不正の噂を流したって訳か……」
「ああ。ただ、勘違いしてはいけないのは、岡田生徒会長が票を白石先輩に流れるようにした事が不正なんじゃなくて、そもそも賭けを行っていた事自体が不正だという事を理解しとかないと」
昌の言うとおりだ。これで岡田生徒会長がミスコンを利用して、賭博行為と云う不正を行っている事は確実だと言える。
では、どうやって岡田先輩の不正を暴くのか?
そして俺に不正を暴くようにメッセージを送ったのは誰なのか?
「そこでだ……おいらに岡田先輩の不正を暴く良い考えがあるんだが、みんな、手伝ってくれないずらか?」
昌は自信有り気に目を輝かせて笑った。
また! そのキャラかよ!
でもこいつがこんな風に自信満々の時は大概、良い事があった為しが無いんだけど……
でも、まあ今回は昌が殆ど調べてくれたんだし任せるか。
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