第21話 ミスコンのカラクリ ②
「では、生徒会室のコンピューターへのアクセス履歴をたどっていきます」
みんなが真美ちゃんのパソコン操作を見守る。
「あ、ありました! 確かに特定の文字を点滅させてますね。『生徒会長岡田の不正を暴け』間違い無いです」
「真美ちゃん! 何処からアクセスしているかわかる?」
「今、調べてみます」
再びパソコンを操作する真美ちゃんだったが、少し間をおいてその手が止まった。
「ダメです。足跡が消されてます」
真美ちゃんはこちらに向き直ってしょんぼりした表情で言った。
「そうか。発信元は掴めなかったか……」
「ごめんなさいです」
「いや! 真美ちゃん良くやってくれたから!」
発信元が掴めずに、少し暗い雰囲気になっているなかでひとり元気な男が口を開いた。
「はいはい! 皆さん! 暗くならない! そこでおいらの出番ってわけさ!」
昌は笑みを浮かべ、自信ありげにソファから身を乗り出す。
おいらってなんだよ! キャラ変わってるから!
誰も突っ込みを入れないのをいいことに、昌は話を続けた。
「岡田生徒会長についていろいろ調べてみた。まず、生徒会長だから当然絶対的な権力を握っている。これは生徒会内だけにとどまらず、各部活動や学園内のイベント事や学内での販売物にまで及んでいる」
「どういうことなんだ?」
「会計面では、部活費の割り当て、イベント費用の収支、学内販売物の選定及び収支、人事面では各部署に適切な配置と任命かな」
今日子が困った顔で昌に聞いてくる。
「なんか、難しい話ね?」
「ごめん! おいらとしたことが! もっと分かりやすく説明するずら」
おーい! 昌! いちだんとキャラが変わってるから!
「例えば部活に関してだけど、生徒会は各部の部費の管理や、対外試合の交渉という事になっているが、岡田生徒会長は次期キャプテンの選定やレギュラーメンバーの決定も行なっているらしい」
「それって部活内で決めることじゃないの」
「普通はね。でも岡田生徒会長の意向が反映しているみたいなんだ」
「ていうことはレギュラーメンバーに選ばれて当然の実力がある選手でも岡田生徒会長がNOと言ったらレギュラーになれないってこと?」
「そういうことになるかな」
「えっ! 何! そんなのどう考えてもおかしいでしょ!」
テニス部所属の今日子は、昌の答えに憤慨しきっている。
「そんなこと可能なのか?」
昌はタブレットをテーブルに置き、ソファに深々と座り直して天井を見上げながら答えた。
「んー、なんて言ったらいいのかな? おいらには知りたくもない大人の都合ってか?」
「はあ~? なんだそれ?」
俺は昌のわけのわからないキャラ作りと、わけのわからない答えに呆れたような声を出した。
「なんだって言われても困るんだけど、ほら、大人の世界には良くあるお金とか権力とかの絡みがあるんじゃない? おいら、子供だからよくわかんないや!」
「それじゃあ岡田生徒会長が、その大人の世界に絡んでいるってことなの?」
今日子が昌に不満げに尋ねた。
「さあね、そんなものが存在するのかどうかわからないけど、一つだけはっきり言えることがある。生徒会長が岡田先輩であり、全校生徒がその事が当たり前で、誰も反対しようする生徒がいないって事だ」
「ちょっと待てよ! 昌! 岡田先輩が生徒会長なんだから当たり前の事だろ?」
「そうだな。ただ、徹、部活ひとつとって見てもあれだけ無理を通しているんだ。おいらには不平不満が出てもおかしくは無いと思えるずら?」
「それは…………」
確かに、昌の言う通り、各部活のレギュラー選手の決定にまで口出ししてくるとなると、少なくとも各部の部長たちが黙っていないだろう。
いや、ちょっと待てよ、その部長さえも岡田生徒会長が決めているのか……。
「わかったよ。そういう事があったとして、昌! その変なキャラで話すのやめてくれないか? 大切な話をしているのに緊張感が無くなるよ」
「あははは……ごめん! あまりにも良くない話だったんでつい…………ね」
昌は頭を掻きながら、照れ笑いを浮かべた。
「ということは、岡田生徒会長の他にも誰かが何らかの形で関わっているということになるのか……昌はある程度は知っているんだよな?」
「まあ、小耳にはさんだ程度には……言わないけどね。ねっ白石先輩」
「え、えっ、ま、まあ…………」
何の脈絡も無く、昌に突然話を振られた凛先輩は当惑した様子で頷いている。
「さて、ここからが徹がメッセージを受け取った岡田生徒会長の不正の話になるんだけど、複数の先輩達から話しを聞いてみると、どうやらミスコンで不正を行なっていたのは間違いなさそうだ」
「それで、不正の内容は?」
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