第13話 異常な日常かも……。 ③
「こんなに美味しいご飯を作ってもらえるなんて、凛先輩の彼氏は幸せ者だな」
「えっ? 彼氏って何の事かしら?」
あれ? まずい話題を振っちゃたかな。もしかして、生徒会長の岡田先輩と付き合っているのはみんなに内緒にしてるのかな?
「えーと、ほら、ウワサで耳にしたものだから……」
「そうなの? でも私、彼氏なんていないわよ」
凛先輩は真顔でさらっと言った。その顔はとても嘘をついているようには見えなかった。
「で、徹くん? そのウワサってどういうものなのか教えてもらえるかしら?」
「その~……あの~……凛先輩と生徒会長の岡田生徒会長が付き合っているみたいな……」
凛先輩はテーブルに頬杖をついて、ため息をひとつついた。
「徹くんの耳にまで届いているんだ。困ったものね」
「徹くんは生徒会役員の選出方法を知っている?」
「ううん。知らない」
「生徒会長は全校生徒の投票で決まるのは知っているでしょうけど、その他の役員、副会長、書記、会計などは生徒会長が選任出来るの。私の場合はミスコンがあった後で前任者が解任され、当時、1年生だった私が選ばれた事から、私と岡田生徒会長が付き合っているんじゃないかって云うウワサが立ったの」
「じゃあ、岡田生徒会長と付き合ってはいないんだ」
「当然! 私があんな薄気味悪い人と付き合うわけ無いでしょう」
「薄気味悪いって……岡田生徒会長はかっこいいし頭も良くて女子生徒から人気あるじゃ……?」
「そうみたいね。でも、私はあの人を見下したような話し方、何を考えているのかわからない作り笑顔、とてもじゃないけど好きにはなれないわね」
確かに、俺がさっき生徒会室で、初めて岡田生徒会長と会ったときに受けた印象も、あまり良い感じではなかったな。
生徒会室と岡田生徒会長の事を考えていたら、重大なあの事を思い出した。
『生徒会長岡田の 不正を暴け』
「その岡田生徒会長なんだけど、何か不正を行なっているって事はないかな」
「えっ?何の事?」
凛先輩は不思議そうに俺に聞き返した。
「生徒会室でパソコンを………………」
俺は生徒会室で起きた、不可思議な事柄を凛先輩に話した。
「『生徒会長岡田の不正を暴け』か」
凛先輩は眉間にしわを寄せながら真剣な表情で考えている。
「俺も初めは見間違いかと思ったんだけど、どうも見間違いじゃ無かったみたいで」
「となると、誰がどんな方法で、徹くんのパソコンにアクセスしたのか?」
「うん。それと俺がパソコンを使っているのを知っていて、俺にそのメッセージを読ませたくて送ったのか?」
「あとは岡田生徒会長が実際に不正を行なっているかどうかね?」
凛先輩はテーブルの上の皿を片付けて、二人の前に置かれたマグカップにコーヒーを注ぎながら続けた。
「まずは、誰がって事ね。私が知る限りだと生徒会役員の中に、岡田生徒会長に対抗しようとする人はいないと思うのだけど」
「岡田生徒会長に不平不満を持っている人もいないの?」
「いいえ、いるとは思うけど、圧倒的な人気とカリスマがある彼に逆らうと、今後の学園生活に影響を及ぼしかねないので言いなりになっているんじゃないかしら」
「だとすると、外部の人間か……。凛先輩、生徒会室のパソコンに学園の外部からアクセスすることって可能なのかな?」
「無理ね。学園内にある全てのパソコンは学園のホストコンピュータが管理しているの。外部の人間がアクセスするためには、ホストコンピュータのパスコードを持っていることと生徒会室のパソコンにアクセス権限を持っていることの二つが必要になるの。その二つを持ち合わせているとなると学園内の人間、それも限られた人物ってことになるのよね」
凛先輩は相変わらず、インスタントコーヒーをちびちびと飲みながら話している。その光景を見てて、俺はふとあることに気づいて凛先輩に聞いてみた。
「凛先輩、もしかしてコーヒー苦手なの?」
「な、な、な、何言ってるの! 大好きよ!」
凛先輩は明らかに動揺している。
「だって、いつもちびちび飲んでいるじゃない」
「ちびちびなんて飲んでないわよ! 何よこんなもの!」
マグカップを手に、一気にコーヒーを飲み干した。
「うっ!」
顔色がたちまち青ざめていく。
「う、うっ、さ、砂糖! 砂糖!」
凛先輩は小さいスプーンで砂糖をすくい口の中に入れる。
「んんっ」
スプーンを咥えながら幸せそうな顔をしている凛先輩を見て、俺は笑いをこらえながら言った。
「なんでブラックのコーヒーが好きだなんて言ったんだよ」
「だって、なんか大人って感じでかっこいいじゃない?」
凛先輩はまだ口にスプーンを持ったまま、恥ずかしそうに視線を横にそらし、もごもご話している。
「で、本当に好きな飲み物は?」
「えっと……ココア……かな……」
「ったく、今入れ直すから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます