第2話1歩
恵梨香「そろそろ目的地だね。じゃあ、
戦闘班来るまでは見張り&待機して
ようか。」
海「そうだね。まぁ、今吸血鬼が通ったら、
自己防衛として僕がこのウェポンでたた
っ斬るけどね。」
恵梨香「まぁーた馬鹿なこと言ってる。
補助班が吸血鬼と戦うことは禁止され
てるんだよ?」
海「それは原則だろ。正当防衛は入らない
よ。」
恵梨香「海の場合は殺したいからでしょ?
それに、私が見てるから規則はちゃ
んと守らせるわよ。」
海「堅物め……」
恵梨香「なんとでも。規則は規則!」
初めまして。
僕の名前は桐峰海(キリミネカイ)
隣の規則はきちんと守る!
がもっとうな、1つ結びの少女は
八乙女恵梨香(ヤオトメエリカ)
2人共、対吸血鬼戦闘部隊(VCT)で働く者の1人です。
まぁ、今は補助班だけど。
僕達のこの世界は、2つの人種がある。
ふつうの人間と、吸血鬼。
吸血鬼は人間の力の5倍〜10倍の力を持つから、人間が一方的に不利になるはずだけど、
両者共に仲良く暮らしてきた。
10年前までは。
10年前、つまり僕が7歳の時。
ある吸血鬼の集団が、人間抹殺の計画を企てた。
元々歴然とした力の差はあったけど、人間も吸血鬼の弱点を見つけ対抗したから、
今まで何事もなく、対等な立場だった。。
けど、その集団はその位置関係に満足しなかった。
気高き我々吸血鬼が、たかが家畜同然の人間と同じ立場なんてありえん!
という思考の元、
自分達を高潔なる使徒
アポストルと名乗り、
人間刈りを始めた。
力の強い者は数が少ない。
これは自然の摂理だ。
しかし、彼らはこれを破ろうとした。
元々人間と吸血鬼は
世界人工10割とした時、8対2の割だった。
けど、アポストルの活動は多くの不満を持つ吸血鬼達も賛同し、
たちまち世界へ広まった。
人間達は死に、比率5対5。
数で言えば数えられず、
数十億人程殺された。
この事件、アポストルの大虐殺は世界中の人間に思い知らすことになる。
けど、ここで黙っている人間なら、とっくの昔に全滅してるはずだ。
政府は、秘密裏に進めていた計画を決行した。
Drug opposition
薬物使用によって、対抗する作戦。
その作戦は、
生き残った人間に、ある薬を打つ。
という、まぁ読んで時のごとくな作戦。
吸血鬼は、契約を結んでいない人間の血を飲むと、薬が精神に干渉し、激しい痛みをもたらす。
最悪の場合死に至る。
その確率は二分の一。
その契約というのも、VCT内に一つしかなく、特殊な術者の詠唱がなければ発動しない陣内で、契約者と血の契りを交わす。
というもの。
ただ、反抗していない吸血鬼達もいるから、血と同じ成分があるタブレットを支給している。
喉の渇きを潤す最低限のものではあるけど、
生活にはなんの支障も出ない。
これによって、反抗していた吸血鬼達はたちまち止まり、
人間の元に成り下がった。
そして、人間たちはこれまたたちまち回復し、
現在の比率は6対4。
けど、全ての吸血鬼が成り下がったわけではなく、
10年たった今でもまだ戦闘が続いてる。
というわけ。
僕も被害者の1人だけど、
命の恩人、如月新(キサラギアラタ)
さんに見事助けられ、
対吸血鬼戦闘部隊直属のアカデミーを見事学年トップで卒業。
戦闘班に入って素晴らしい功績を残すだろう!!
と期待を背に入ったわけだけど……
まぁこの通り。
VCTに正式に入って約2年。
未だに補助班員です……。
これには理由がある。
戦闘班に入るための条件を僕は満たしていないからだ。
戦闘班になるには、吸血鬼対抗武器
ウェポンが必要だ。
ウェポンは、吸血鬼に対抗するために人間が開発したもので、
人によりけりだけど、普通の人間の約5倍程の力がつくよう、身体強化してくれる代物だ。
これは適正するかどうかが大事。
もう才能でもある。
元々学年トップな僕は適正もトップだから、
すぐにウェポンは見つかった。
澄んだ青色の太刀だった。
ここまではいい。
ウェポンが見つかって、
やったー。これで吸血鬼を殺せるー。
両親の敵じゃー。
と意気込んだはいいものの。
新さんから痛恨の一撃。
新「アカデミーで習ったろうが。
海お前、条件満たしてねぇよ?」
………。
これが僕が今まで補助班止まりな理由。
戦闘班に入るには、2つの条件がある。
1、ウェポンを所持していること。
2、契約をした、吸血鬼のパートナーがいる
こと。
いくらウェポンを手に入れて、
普通の人の力の約5倍ほどまでには身体強化できるとしても、
約10倍の力を持つ吸血鬼が現れたら?
……即死決定。
ということで、VCTはそれを条件にしている。
けど、僕は吸血鬼を恨んでいて、復讐するためにここに入った。
なのになんで吸血鬼と一緒に行動を?
ありえない。絶対にありえない。
そんなこんなで、僕はずっと補助班員。
同期達は皆戦闘班に入ったり研究班に入ったりで、
アカデミーの時の僕のプライドは、
砂として崩れ去った。
誰にだって、嫌いなもの。譲れないものがある。
さて、それを克服するにはどうすればよいか??
そんなのしるか。
嫌いなものは嫌いだ。
しょうがない。
けど、それじゃ前に進めないのもわかってる。
悩んで悩み続けて早2年。
僕は未だに悩んでる。
恵梨香「海、ボーッとしてる。大丈夫…?」
海「あぁ、ゴメン。大丈夫。」
恵梨香「そっか。ならいいや。
そういえばさ?海はいつにするの?」
海「何が?」
恵梨香「何がって……。吸血鬼との契約だ
よ!いつまで補助班員でいるつもり?
私はまだ半年だけど、海2年なんで
しょ?いつまでも落ちこぼれててい
いわけ?」
海「うるさいなぁ。僕には僕のペースがある
んだ!」
恵梨香「随分マイペースだこと。」
海「グッ………」
恵梨香「なんでそんなに嫌なわけ??理由があ
るの?」
海「そんなもん、吸血鬼が嫌いだからに決ま
ってるだろ……。隣にいるだけでも怖い
のに、後ろから噛みつかれでもしたらた
まったもんじゃないよ。
想像すらしたくない。」
恵梨香「じゃあ、突然に襲われる可能性があ
るから嫌だ。ってこと?」
海「まぁ、そんな感じ。僕の両親が吸血鬼に
殺されてるの知ってるだろ?それもあっ
て一緒にいたくないんだよ。」
恵梨香「じゃあ、ずっとこのまま補助班?」
海「そんなわけないだろ。両親のことは抜き
にして、僕のメンタルにあったやつが現
れないだけだよ。
どうしても後ろから襲われる可能性が拭
えないだろ?」
恵梨香「海……ひょっとして馬鹿?」
海「は……?何言ってんの、僕は天才だ
よ。」
恵梨香「だって……。後ろから襲われたくな
いんでしょ?だったら、自分より弱
い吸血鬼をパートナーにすればいい
のに。と思って……。」
海「今………何て言った?」
恵梨香「え…?だから、自分より弱い吸血鬼
を……」
完全に盲点だった…….
海「それだーー!!!
なんで今まで気づかなかった!?
恵梨香、お前天才だな!
感謝する!」
恵梨香「え? う、うん。
どういたしまして…?」
そうと決まれば、この任務が終わったら早速探しに行こう!!
海「どうやって手に入れるか……
VCT内のだと、どれもランクAからCだ
しな……。
僕の要求はなるべくD以下…」
恵梨香「じゃあ、オークションは?
あそこならお金はかかるけど、沢山
ランクがあるよ……??」
海「僕、今恵梨香が天使に見えるよ…。」
恵梨香「え、急に何。
いつもの紳士かぶっきらぼうキャラ
はどこいったの…。
今度は使徒キャラ?」
海「うるさい、人の感謝は素直に受け取
れ。」
恵梨香「はーいはい。
でも、ランクD何て随分余裕持つ
ね?」
海「まぁ、念には念をね。」
吸血鬼や僕達VCT内の人間には、あるランクが決められている。
普通の人間。
つまり、ウェポンを持たない男女の平均を基準とした数値を、
1番底辺として考える。
そこから、何倍ほどの力か。
つまり、握力、腕力、飛力、魔力など、様々な種目を数値化してランク分けするわけだ。
SSSランクからGランクまである。
詳細的には、
SSS 10倍以上
SS 9以上10未満
S 8以上9未満
A 7以上8未満
B 6以上7未満
C 5以上6未満
D 4以上5未満
︙ ︙
G 1以上2未満
こんな感じ。
僕がほしいのはランクD。
VCT内では少し弱め。
ちなみに、僕はランクA。
平均はCランク。
海「さてと、決まった事だし、早く任務終わ
らないかなー。」
恵梨香「そうだねー。結構待ってるよ
ね……」
司令班「こちら、VCT司令室。現在待機して
いる補助班員、桐峰班員と八乙女班
員人継ぐ。
吸血鬼が現れた。場所は東側。
君達のいる場所とは離れている。
帰還を命ずる。
繰り返す。ただちに帰還せよ」
海・恵梨香「了解した。」
海「ったく。結局無駄足だ。
補助班はこればっかりだな。」
恵梨香「本当ね。」
海「まぁ、明日には僕は戦闘班員になってる
かもね。もしかしたら恵梨香とはこれが
最後の任務かも♪」
恵梨香「え……??じゃあ、もう会えない
の?」
海「まぁ、会えないことはないだろうけど
ね。」
恵梨香「そっか……。じゃあたまには会いに
行くね…。」
海「ふ……。俺が忙しくなかったらな。
お前も戦闘班員になればいいんだよ。」
恵梨香「私は、適正がまだないから…」
海「まぁ、いつか来るだろ。
お前も頑張れー」
恵梨香「もう、適当だなぁー。」
さて、前は急げ。
さっさと会場に向かおう。
今は午後2時少し前。
今日は多分丁度オークション開催日だ。
運も味方してる。
オークション開始は午後6時から。
やっと前に進めるはずだ…。
いや、進むんだ。
この2年間のブランクを取り戻そう。
僕は、これからの事に対する不安と、期待を胸に
1歩、踏み出した。
大嫌いな吸血鬼 @ninaruna
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