第二章 小説の外観

第1話 小説を書く上で一番大事なこと

「……うーん。こんなもんかな……」


 夕食と入浴を済ませ、自室にて。

 彼女が書いてくれたノートの小説の作法を見ながら、彼女の小説やラノベを参考に小説の修正を実行していた彼。

 全部とは言わないものの、話の冒頭だけはノートを見ながら修正できていた。

 時計を見やり、そろそろ彼女が部屋に来ると判断した彼は修正した部分までを印刷する。

 彼と彼女は兄妹であり、一つ屋根の下で生活している。だいたいの互いの生活リズムは把握はあくしているのだろう。

 と言うよりも、特に小説を教わる為だからと言う、今日に限った話ではなく。

 基本毎日彼女は自分の用事を片付けると彼の部屋を訪れる。そして彼いわく『ペットとのふれあいタイム』を開催しているのであった。


 印刷された紙を眺めながら自分なりに納得していた彼。

 数時間前に眺めた紙と内容的には同じはずなのに、何故なぜだか別の作品のようにも思えていた彼。そう、非常に読みやすくなっていたのだろう。

 脳内で想像している書式と、視界に入るものが違う。それはピントやサイズの合わないものと同じで不快なのだと思う。

 それがクリアされたことによる爽快感そうかいかんを味わっているはずだ。

 そう、内容が変わらずとも見た目を変えるだけで随分ずいぶんと違って見えるものなのである。


 すっかりと日も暮れ、窓が鏡の役割を果たしている彼の部屋。

 窓に映し出される彼の表情は数時間前とは比べ物にならないほどの、確かな充実感が浮かび上がっているのであった。


「……まぁ、でも……色々指摘されるんだろうなぁ……」


 印刷された紙を眺めながら、苦笑いを浮かべて言葉を紡ぐ彼。

 確かに作法を守ったことで見た目的には読めるようになったのだろうが、中身については何も変わってはいない。

 見た目に感じていた違和感が解消されたことにより、新たな違和感を覚えていた彼。

 とは言え、「たぶん、文章構成的な作法みたいなものなのかな?」と漠然ばくぜんと感じていたのだろう。

 特に指摘をされることへの嫌悪感けんおかんを抱いているのではなく、ただ目の前に映し出される小説の変化。

 確実に向上していると実感し、この先の指摘に胸をふくらましている彼なのであった。



「……お兄ちゃん、お待たせ~♪」

「……お、おう……」


 数分後。

 突然扉が開き、入浴を済ませたホクホク顔の彼女が部屋へと入ってくる。

 普段ならばTシャツ一枚か、彼のシャツ一枚を羽織はおっている彼女なのだが。まぁ、普段の服装については彼女なりの「好き好き」アピールであるがゆえ、ご理解いただくとして。

 さすがに今日は小説を教えることを理解しているのだろう。下にショートパンツをいている姿に心の中で安心をしていた彼。

 そんな彼女が自然とローテーブルの前に座ったのを確認した彼は、印刷された紙を持って彼女の横に座るのだった。


「えっと……とりあえず、冒頭部分だけなんだが……」

「わぁい♪ ……うんうん、小説だねぇ~♪」

「あはははは……」


 苦笑いを浮かべながら小説を差し出す彼。彼女は嬉しそうに受け取ると小説に視線を落としていた。

 しかし即座に視線を彼に戻すと、満面の笑みで言葉を送っていた。

 彼女の言った「小説」に、自分でも感じていたことだろう。

 彼女に乾いた笑いを返す彼なのであった。


「……さて、と。一応、読ませてもらったよぉ~♪」

「お、おう……それで何が悪い? ――あっ、い、いや……間違いを一つずつ教えてくれないか?」

「いいよぉ~♪」


 少しの間、熱心に小説を読んでいた彼女。視線を再び彼に戻すと読み終えたことを報告していた。

 そんな彼女に緊張した声色で返事をした彼は、指摘部分を聞こうとして慌てて言い直す。

「何が悪い?」も、聞き方としては間違いではないのだろうが、それは「大半の正しい部分に差し込まれた数箇所かしょ程度の悪い部分」を聞く場合に使うのだろう。

 しかし、彼は自分の小説を「ほとんどが間違いなのだろう」と判断していたのかも知れない。

 それ以前に、自分の気づけなかった『全部の間違い』を知りたい彼としては、一つずつ教わりたかったのだろう。最初から彼は、それを望んでいるのだから――。


 彼の言葉を受けて、満足そうに了承する彼女なのであった。


「最初に言っておくけどぉ~」

「なんだ?」

「ここから先は、あくまでも私個人の考えだからね? 別に正解とかじゃ、ないからね? 私が独学で覚えたことなんだからね?」

「それで問題ないぞ?」


 最初に、と断りを入れた彼女は困惑の表情で彼に言葉を紡いでいた。

 そんな彼女に苦笑いを浮かべて答える彼。

 そもそも……小説の作法そのものは確かに正解なのかも知れないが、説明については彼女の独学でしかない。そう彼女も宣言していたのだ。それを知っている彼。それでも。

 彼女の説明に納得する部分が存在すると感じていた彼だから、彼女に内容についても教えてもらいたいと願っていたのだ。

 つまり、わざわざ断りを入れる必要などなかったのである。


「そう、よかった……それじゃあ、始めるよぉ?」

「よろしく」


 彼の言葉に表情をゆるめて安心する彼女。そして微笑みを浮かべて再開を宣言していたのである。

 そんな再開の宣言を聞いて、気を引き締めながら答える彼なのであった。



「まず、最初にね?」

「お、おう……」


 再開されることを察し、姿勢を正して返事をしていた彼。


「お兄ちゃんは……小説にとって一番大事なことって、何だと思う?」

「え? ……」


 そんな彼に微笑みながら彼女は質問をするのだった。


「小説の作法じゃないのか?」

「違うよぉ~。小説の作法って言うのはルールだもん。守って当然……大事とかってレベルの話じゃないもん♪」


 彼の返答にケラケラと笑いながら言葉を紡いだ彼女。

 小説の作法を守って、はじめて小説になる。彼女の考えからすれば空気を吸うことのようなものだろう。


「うーん……語彙力ごいりょくってやつなのか?」


 彼は別の答えを脳内で導き出そうとして、ネットなどで得た知識を思い出し、言葉にしてみた。ところが。


「違うんだよぉ~♪」


 彼女は彼の答えを苦笑いを浮かべて否定するのだった。

 

 語彙力。

 どれだけ多くの種類の単語を知っているか。ある言語において、どれだけ豊富な語彙を把握はあくしているかと言う指標しひょうである。

 簡単に説明するならば、言葉そのものの総数も当然だが、一つの言葉の言い回しをどれだけ知っているか。こんなところなのかも知れない。

 

 確かに語彙力は大事なのだろう。文章を書く上では必要なのかも知れない。しかし、小説においては特に重要ではないと彼女も、そして私も考えている。


「小説にとって一番重要なのはねぇ~?」

「あ、ああ……」


 彼女が答えを紡ごうとしていたので、慌ててメモ帳に視線を移して書き込む準備を始める。


「相手に自分の脳内の映像を、どれだけ鮮明に伝えられるかってことなんだよぉ~」

「……あっ、そうか……」


 彼女の言葉を受けて、思い出したように納得の声を漏らす彼なのであった。


 ――小説とは読者に説いているもの。作者の脳内に描いた映像を鮮明に読者へと理解させるもの。

 

 小説の作法の時に彼女が彼に伝えたことなのである。


 たまに見受けることがあるのだが。

 昨今のラノベやネット発信小説を「小学生の書いているような文章、稚拙ちせつな文章」だと卑下ひげする者がいる。

 一般小説を読んでいる者も、大抵が「読むに値しない低レベル」だと感じているのだろう。

 く言う私の書いている小説も語彙力は低い方だと自負じふしている。

 特に当作品の本編小説では強く感じ、「こんな低レベルの文章なら読む必要はないな?」と思ってブラバをしている人間も多くいるのだろう。

 確かに、私の小説は他の作者に比べて語彙力など皆無かいむに等しい。よく耳にする「お子様レベルの文章」なのかも知れない。

 しかしながら、私は特に語彙力を高めようとは考えていない。なぜなら。

 私の書きたいものは、物語であり小説なのだから――。

 

 相手に伝わって、はじめて小説は小説と呼べる。

 小説は文字の羅列られつでしかない。漫画のように絵で補足できるものではない。アニメのように動作を目で、感情の起伏を目や耳で確認できるものでもない。

 そう、小説は『すべてを文字のみで表現する』のである。


 ところが、小説とは表面上で起こっている登場人物の言動を理解するものではない。

 情景や心情などの描写を通じて、描かれていない部分。つまりは行間を読み解くのが小説である。

 その昔、描写不足を指摘され「描写が足りない」や「こんなのは行間を読ませるものではない」と指摘を受け、現在のような描写過多かたになっているのだが。

 脳内で文字を映像に置き換える。その上で描かれていない部分を自分なりに想像して補完をしていくのが小説の読み方であり醍醐味だいごみなのだと思う。

 そう言う意味では描写は多ければ多い方が、回想による補完説明が多ければ多いほど、それだけ鮮明にイメージできるのだと思う。

 逆に昨今のラノベを読みながら描写や補完説明が少なすぎて、奥深くに存在するであろう、登場人物の描かれていない心情や背景が見えてこないことをなげくほどである。

 とは言え、単なる私の思考なので気にしなくても問題ないのだが。


 そして、これは漫画やアニメにも共通すること。

 だから最近ネットの書き込みなどで「この作品はつまらない」などと口にする者を多く見受けるのだが。

 作品とは誰にも平等に与えられた描写に過ぎない。

 面白さとは、与えられた描写から色々と読み解いて自分なりに見つけるもの。そう、与えられたものだけで何かを決めるのは自分の読解力のなさを露見ろけんしているに過ぎないのである。

 話を戻そう。


 つまり行間を読ませる必要があるのだから、描写に難解なんかいな語彙を羅列することは。

 簡単に説明すれば小説における作者のメッセージへの妨害ぼうがいになると言うこと。

 小説とは、いかに読者へ作者の隠されたメッセージへと導けるかが重要なのだから――。

 

「だからねぇ? どんな人でも最低限理解できることを前提に小説は書かないとダメなんだよぉ」

「なるほど……」

「もちろん難しい言葉の方が格好かっこうがつくし、小説書いているって気持ちになるんだろうけどぉ? でも読んだ人に理解されないんじゃ意味ないでしょ?」

「まぁ、な?」


 彼女の言葉に苦笑いを返す彼。

 もちろん限度と言うものはあるだろう。本当に誰にでも理解できる作品では『幼稚園児の日記』になってしまう可能性がある。

 申し訳ないが、私は小説を読みたいのであって幼稚園児の日記を読みたいとは思わない。読む気にもならないはずだ。

 だから基準は「自分が何も知らない読者」として読み返して作品を理解できるか。そのレベルで書くのが一番なのだと思われる。

 何も知らない。それは展開だけの話ではなく。

 一読者として、たまたま見かけた他の作者の作品を読むように。

 完全な初見で読んだとして、文章だけで映像が再生されるか。小説の伝えたい部分が伝わるか。そう言う意味である。

 

 そして、読み返した時点で一読者目線から疑問を覚え「なんで?」と自問自答をしてみよう。

 それを作者として返答する。返答できない部分は文章で補足をする。

 実は自問自答を繰り返すだけで描写は濃くなっていくもの。

 私は、この方法で小説を作り上げているのである。

 読者に理解を求めるのなら、まず書いている本人が作品を理解しなくてはいけない。

 これが相手に理解してもらう小説を書く上での重要なことなのだろう。


「つまり、相手に伝えるってことは……文章を理解させることじゃないの。話の本筋と伝えたいメッセージを理解させるってことなの」

「そうか……文章に理解力を求めていると、肝心かんじんな話なんて見えてこないからな?」

「そう言うこと♪」


 彼も理解を示したのだろう。彼の言葉に満面の笑みで答える彼女。

 相手に理解を示すのは文章ではない。本筋とメッセージなのである。


 例題としては的確かは知らないのだが、殺人事件のシーンを想像してもらいたい。

 もしも容疑者の名前が長ったらしく一度では覚えきれないような名前だったとしよう。それも数名いるとして。

 探偵がアリバイをたずねる場合に、わざわざ必ずフルネームで呼んでから質問したとしよう。

 はたして読者には犯人が導き出せるだろうか。

 仮にヒントだらけで答えを簡単に導き出せるレベルだったとしても、容疑者の名前を覚えることで精一杯せいいっぱいにはならないだろうか。

 逆にABCのように安易あんいな名前だとして。

 その方が簡単に個別認識し、アリバイなどを考察できて、答えを導くには適しているとは思わないだろうか。


 ここで言う容疑者のフルネームと言うのが普段使われないような難解な文章であり、ABCが稚拙な文章である。

 人と言うのは難解な言葉や漢字を目にすると、思考が一瞬止まって理解しようとするもの。

 一瞬だとしても読んでいる人のリズムを狂わせるのだろう。それは強制的に読むリズムを止められていること。無意識にストレスを感じているのかも知れない。

 そして理解をしようとすると言うことは、話の展開が一時中断されるのである。それを繰り返すことで話の内容が頭に入ってこない現象も起こりうるのだろう。

 もしくは、最初から読み飛ばすことで難解な文章の部分を理解せずに読み進める。伝えるべき部分を読み飛ばせば、行間など読み取れるはずはない。

 そう、小説とは書いてある文章を理解させるものにあらず。書かれていない行間へと導くすべを書きしるすものである。


「それと同じでぇ~、普段使わないような漢字も開く方がいいんだよぉ~」

「……開く?」

「漢字を平仮名にすることだよぉ」

「なるほど……」

「それでも開けない漢字……ううん。漢字の方が伝わることもあるの。その場合には、振り仮名を振るようにするのが重要なの」

「そうなのか」


 彼女の「開く」に疑問を覚えた彼。

 彼女の言葉通り「漢字を平仮名にすること」を「開く」と言う。

 また逆に「平仮名を漢字にすること」を「閉じる」と言う。

 つまり彼女の台詞から引用すれば、「普段使わない様な」を「普段使わないような」と開くことを意味する。

 もちろん、この程度の漢字ならば前後の文章で理解できるだろうが。

 中には普段開くのが普通の「しかし」「もっとも」「の」などのように。意味もなく漢字にしている作品を見かける。そう、意味などないはずだ。

 当たり前の話ではあるが、どんな時代の歴史小説であろうとも、漢文でない限り平仮名は使われる。そう、「しかし」「もっとも」「この」と普通に現代で使われている平仮名にしたところで、時代の雰囲気ふんいきなどそこなわれないはずだ。

 そして、読んでいる者が普段から難解な漢字に慣れ親しんでいるなら話は別だが。

 正直現代では平仮名で書かれるのが主流だろう。

 そんな日常で平仮名を用いている言葉を、わざわざ漢字をもちいるのは自己満足に過ぎないのである。

 読めるかも知れない。しかし一瞬のタイムロスが生じるだろう。それは読み手に妨害工作をしているのと同じなのである。


 しかし彼女の言う通り、日本語には同音異字どうおんいじと呼ばれる同じ響きで違う漢字が存在する。

 平仮名で書いてもイメージしにくい言葉もある。

 その為、難解な漢字でも用いることはあるのだ。

 平仮名では色々なイメージが浮かぶ言葉も漢字を見れば一つのイメージになる。

 どうおんいじ。突発的に使った場合、これで瞬時に同音異字をイメージできるのか? そう言うことなのである。

 しかし先に説明した通り、難解な漢字は一瞬読み手のリズムを狂わせる。

 そうならないように、難解な漢字には振り仮名を振るのである。

 振り仮名、及び、ルビについては当サイトのメニュー『取扱説明書』の『ルビ・傍点ぼうてんの振り方』の項目を参照していただきたい。

 ……ここが本文ゆえ、説明をしたくてもルビが適用されてしまい説明できないのである。


 だがしかし、振り仮名と言うのは基準がない。あくまでも個人で基準を決めて振るものである。

 だから自分で「これは振った方がいいかな?」と思う漢字に振るしかない。

 つまり、何から何まで振る必要はないと言うこと。普段使われなさそうな漢字だけに振るのがベストだろう。

 とは言え、完全な自分基準での判断は控えておこう。

 当たり前だが、自分は漢字を読みで変換しているのだから全部を読めているのだ。

 その基準で「これくらいなら読めるよな?」と判断するのは間違いである。

 確かに実際には全員にも普通に読めているかも知れない。しかし本当に全員が読めていると考えるのは浅はかなのだろう。

 読めない人もいる。そう考えて読みにくい漢字に振り仮名を振ることを提案したいのである。

 読める者は振り仮名ではなく漢字を読む。読めない者だけが振り仮名を読む。読める者だとしても全部の漢字を読めるとは限らない。

 だから振り仮名を特に邪魔だと感じる者もいないのだろう。

 これも読者への配慮。理解を求めると言うことなのである。


 そう言う意味合いで、登場人物の名前には必ず振り仮名を振る習慣しゅうかんはつけるべきだと思う。

 登場人物とは作品で一番多く使われる単語であり重要な単語だろう。それは一番間違った認識を与えてはいけないと言うこと。もちろんミスリード目的ならば違うのだが。

 誰でも知っている、読める人名だとしても必ず振るようにするのが基本だと思われる。


 佐藤正。こう言う人物がいたとしよう。

 確かに誰もが『さとう ただし』と理解するかも知れない。

 とは言え、振り仮名を振っておかなければ『さのふじ せい』と誤認されないとは言い切れないのである。

 これでは相手に自分のイメージを伝えているとは言えないだろう。 

 

 できるだけ誰にでも映像が伝わるように、わかりやすく描写をする。

 普段使わないような文章や漢字は基本使わない。

 もしも使う場合は振り仮名を振ってスムーズに読み進めるように誘導する。


 これが私の心がける小説における最優先事項なのである。

 つまり彼の答えた語彙力。私は語彙力ではなく表現力が一番大事なことなのだと考える。

 語彙力とは知識。確かにあればあるほど優位なのかも知れない。

 しかし肝心なのは相手に伝える。伝わるように表現することなのだと思うのである。

 

 とは言え、普段使わないような文章を完全に否定しているのではない。

 時には必要だと思っている。

 それは「ここはサラッと流さずに、しっかりと読んで言葉を理解してほしい」と言う部分。そう、一瞬足を止めさせる目的で使うことは有効的だろう。

 そう、意図的いとてきに足止めをさせる目的で使われるのが、普段使わないような文章の役割なのだと思うのである。



「むふふぅ~♪」

「ど、どうしたんだよ?」


 突然彼の左腕に絡まる彼女。特に驚くことでもなかったのだが、一応声をかけていた彼。


「……もう少しぃ~、兄妹の理解を深めようと思うんだよぉ~♪ すぅー。ふぁー」

「……」


 こんなことを言い放つと彼の腕に顔をうずめる彼女であった。

「今更俺達に、兄妹の理解を深める必要なんてないのにな?」と脳内で考えつつ、苦笑いを彼女の後頭部に送っていた彼だったが。

 視線をメモ帳に移して彼女の説明の理解を深めようとする彼なのであった。

 

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