第10話 「!」や「?」などの後ろには一文字分空ける。ただし「」の終わりの場合にはその限りではない。 + おまけ


⑥ 「!」や「?」などの後ろには一文字分ける。ただし「」の終わりの場合にはその限りではない。


「それじゃあ、最後の項目だねぇ~♪」

「お、おう……」


 引き寄せていた腕をパッと離した彼女は嬉しそうに言葉を紡ぐ。

 項目最後と聞いて「意外と長かったな……」などと思いながら、苦笑いを浮かべる彼。


「まぁ、これは読んだままだと思うよぉ~」


 そう言葉にしながらメモ帳に書きつづる彼女。



『「お兄ちゃん、大好き! 私のこと好きだよね? 愛しているよね? 結婚したいって思っているんだよね!」』


 

「……なるほど」

「そこはイエスか! ノーか! 二者択一にしゃたくいつでしょー!」

「なんで答えを求めるんだ! って言うか……二者択一でいいのか?」

「やだーーーーーーーーーーーーー!」


 あくまでも文字だけを理解していた彼は納得の声を漏らしていたのだが。

 頬を膨らませて食ってかかる彼女に苦笑いを浮かべて返事をする彼。

 そもそも二者択一をしてもいいのか? 答えを迫られたのか?

 そんな風に決断を余儀よぎなくされたのかと思い、神妙しんみょうな顔で聞き返していた彼だったが。

 目の前で耳を両手でバッとふさぎ、泣きそうな表情で絶叫する彼女。

「だったら答えなんて求めんなよ……」と言いたそうな表情で優しく頭を撫でる彼。


「ぅぅぅ……」

「ま、確かに空白があった方が読みやすいよな?」


 少し落ち着いたのか、耳を解放した彼女に安心しながら声をかける彼なのであった。


「!」を感嘆符かんたんふ。「?」を疑問符と、そう呼ばれている約物。

 なお、一つの場合は全角なのだが、二つセットで使う場合は半角二つで「!!」と、このように全角一文字分にするのが好ましい。

 とは言え三つの場合は全角三文字になるのだが、約物ばかり多用しても何も意味はないのだから、せいぜい二つにする方向で書き進めた方が得策かも知れない。 


 そして二つの混合。

「!?」を感嘆疑問符。「?!」を疑問感嘆符と呼ぶ。

 意味合いとしては読んだままなのだが。先にどちらの感情が来るかで変化するのだろう。

 つまり感嘆疑問符は「へぇ! ……え?」であり、疑問感嘆符は「え? ……へぇ!」となる。それを一つの文章にかけているものなのだろう。

 確かに、どちらも間違いではないので、どちらを使用しても問題はないのだが、私は感嘆疑問符しか使わない。否、それすら使いたくはないのかも知れない。

 一つの言葉にかけるには疑問感嘆符はおろか、感嘆疑問符でも不自然さが残るものだから。


 人間とは予想せぬことに遭遇そうぐうしたら驚くだろう。心を奪われたら感嘆の声を漏らすだろう。そして数秒もしないうちに、その驚きが疑問へと変わる。これが感嘆疑問符なのだと思われる。


 

 素敵なお姉さんが奏でる素敵な音色のピアノ演奏に感嘆の声を漏らしていると、突然横から係の者がピアノを押してお姉さんごと運んでしまう。

 だが、音はそのまま……疑問に思い足元を見ると小さな子供が子供用ピアノを演奏していた。


『素敵なピアノ演奏をするお姉さんかと思っていたら!?』


 ……実はマネキンで、本当は小さな子供が演奏していたのであった。 



 例題として不十分だが、こんな感じかも知れない。

 そう、人間は感嘆の声を上げたとしても瞬時に疑問へは移れる。

 感嘆とは、ただ心から漏れる声であり、言葉自体に脳を支配されないものである。


 しかし逆の疑問感嘆符の場合。

 人間が疑問を覚えている状態から瞬時に感嘆の声を上げられるだろうか。

 疑問とは考えるもの。答えを導こうとするもの。納得するまでに時間をしょうじるものではないだろうか。

 正直、即座に解決して感嘆を漏らせる疑問は疑問として認識しないのではないか。

 どうしても二つ三つ以上の文章をついやして、感嘆を漏らすまでに行き着くものだと考える。

 つまり、一つの文章でまとめられるほどの簡単な話ではないのである。 


 とは言え、どちらも実際には単体で使われている意味の『強調』としてだけ使われることが主である。これが基本だと思われるので私の持論じろんは成立しないのかも知れない。

 疑問符だけ、感嘆符だけよりも両方の意味を合わせた方が都合のよい場合もある。伝わりやすいのだろう。

 しかし先に説明した通り、疑問と感嘆が同時に脳内を支配することはない。必ずタイムロスが生じるもの。

 それならば私は感嘆は感嘆として、その直後に変化をつけて疑問へと導くように地の文章で操作する。

 

 つまり。



「……へぇ! 素敵なピアノ演奏だなぁ! ……ん?」


 素敵なお姉さんが奏でる素敵な音色のピアノ演奏に感嘆の声を漏らしていると、突然横から係の者がピアノを押してお姉さんごと運んでしまう。


「え? あれ? あれあれ? ……え? ……」


 あっと言う間にピアノは撤去てっきょされたのだが、音はそのまま……疑問に思い足元を見ると。


「……うそ、だ……ろ?」


 なんとそこには小さな子供が子供用ピアノを演奏していたのであった。 

 ……実はお姉さんだと思っていた人はマネキンで、最初から小さな子供が演奏していたのであった。 



 このように動きに合わせて地の文をはさみ、台詞と約物を変化させていく方が読者にも場面が伝わりやすいのだと思われる。

 そう、上記の会話を集約したのが最初の例題の『!?』なのである。

 とは言え、あくまでも会話内の約物である。語尾の強調と言う意味では使ってみるのも一つの手だと思う。

 しかし、一つだろうが二つだろうが読者に理解してもらう為の強調なのだから一つで十分なのだとも思っている。

 感嘆符は感嘆。疑問符は疑問。登場人物の会話の語尾で、それを理解してもらえば問題ないはずだ。

 結局、数が増えるだけ、二つの約物を合わせただけでは伝えたい場面そのものの強調にはならない。

 やはり場面の強調とは地の文と表現力でおぎなうものなのだろう。

 

■ 


「……ふぅ。読みやすいって言うのも、あるんだけどねぇ?」

「おう……」


 やっと完全に落ち着きを取り戻した彼女は軽く息をつくと説明を続ける。

 その言葉を受けて撫でていた手を離して言葉を返す彼。


「感嘆にしろ、疑問にしろ……句点と違って文字一マスでは語れないんだと思うんだよぉ?」

「ほうほう……」 

余韻よいんって言うのかなぁ? 句点は二拍にはく休んで次に進むでしょ?」

「まぁ、な?」


 彼女の言葉に相槌を打つ彼。

 句読点の項目で『句点は二拍無音を入れる』と伝えたことである。


「でもさぁ? 感嘆や疑問って、そんなに簡単に気持ちが切り替わるはずはないんだよぉ」

「――そっ! ……ま、まぁ、現実だったら、そうだよな」

「でしょぉ~?」


 一瞬、彼女の言葉に「そんなことないだろ?」と口にしようと思っていた彼だったが。

 登場人物が、『その世界に普通に生活をしていること』を思い出したのか。現実ならば気持ちが瞬間に切り替わることなど不可能だと感じたのだろう。

 言葉を飲み込み、苦笑いを浮かべて彼女の言葉を肯定していた。

 そんな彼の答えに満足そうに答える彼女なのであった。


「だからね? 感嘆や疑問の感情には、もう一拍無音が必要なんだと思うの」

「それが空白なのか?」

「そう言うこと♪ その空白で気持ちをリセットして次の台詞を紡ぐんだと思うんだよぉ」

「なるほど、な……」


 満足そうに言葉を繋ぐ彼女の言葉に納得する彼。

 句点と違い、感嘆や疑問。更に私の場合は『♪』も用いているが。

 感情的に起伏きふくのある記号については、感情のリセットの意味で空白を入れている。


「それで、『ただし「」の終わりの場合にはその限りではない』って言うのは――」

「句点と同じで閉じカッコそのものに終わりの意味があるから、わざわざ空白を入れる必要はないってことだろ?」

「うんうん♪ 改行してリセットされるんだから入れる必要はないんだよぉ~」


 彼女の言葉をさえぎるように答えを導き出した彼に、「よくできました♪」と言わんばかりに満面の笑みで返す彼女。

 そう、彼の答えの通り、「」が一つの区切りである以上――否、そもそも改行が文章の流れのリセットなのかも知れない。

 文章の流れを切るのが改行である。だから改行されるのだからリセットされるのは当然だろう。

 つまり、わざわざ無音を入れなくても強制的にリセットするのだから無駄なことはしないのである。



「これで小説の基本作法は終了だねぇ」

「そ、そうか……ん?」


 彼女の言葉に少し緊張していた全身の強張こわばりを解いた彼。しかし彼女が再びメモ帳に何かを書き出していることに疑問の声を漏らす。


「ああ、うん……ついでに『ネット小説での書き方』も書いておくよぉ~」


 視線を向けずに言葉だけを送る彼女。


「まぁ、これくらいしか知らないんだけどねぇ~」

「……」


 すぐに書き終えた彼女は彼に視線を移して苦笑いを浮かべながら答える。 

 彼がメモ帳を覗き込むと。



『地の文と会話文の間には空行を一行入れる』



 とだけ書き加えられていた。


「これは特に守らなくちゃいけないって項目じゃないんだけど……ネット小説って、書籍と違って読める媒体ばいたいが複数あるでしょ?」

「確かに……」

「だから読む媒体によって見え方が違っているんだよぉ」

「そうなるな?」


 彼女の言葉に相槌を打つ彼。

 印刷所にて印刷されて流通されている書籍。それは出版社でレイアウトについて決定しているから誰が読んでも同じだと言うこと。

 だから書籍として読みやすい行間を提示すれば空白を入れなくとも読めるのである。

 更に書籍は基本縦書き。日本人は縦書きを読み進めることには慣れているのだろう。

 だがネット小説とは基本横書き。そして読める媒体が複数存在するのである。

 当然ながら全部の媒体で同じ見え方などする訳もない。


 具体的に言えば、画面の大きさによる一行の文字数。行間の隙間すきまも違う。

 同じ文章もPCだと一行に収まる文章が、ガラケーでは数行になってしまう。PCでは空行を入れずとも見やすく行間の隙間があるのにガラケーでは文字が詰まって見える。このような違いが生じているのだ。 


「だからね? ……まぁ、全部の媒体を利用して全部で読みやすくするのが一番なのかも知れないけど……」

「いや、そんなの無理だろ? 俺達スマホ持っていないんだしさ?」

「うん、だから作者は自分の扱う媒体で読みやすくするしかないんだよぉ~」

「まぁ、そうだよな」


 苦笑いを浮かべて紡がれた彼女の言葉に同じような表情で返す彼。

 事実、全部の媒体を駆使して一番読みやすい書式を選ぶことは難儀なんぎである。

 だから自分の読む媒体で読みやすく書いていくしかない。


「でもね? 横書きが主流なネット小説において、媒体問わず、地の文と会話の間に空行を一行入れるのは読みやすくなると思うの」

「ほうほう……」

「とは言っても二行以上は間が伸びるし、会話の間は詰めるのがベストかな?」

「そうか、わかった」


 彼女の言葉に理解を示す彼。

 地の文と会話の間の空行は本編で使われているスタイルである。

 日本人は縦書きには強いが横書きには弱い。正確には日本語そのものが横書きにはてきしていないのかも知れない。

 その為、縦書きのように上から下へ視線を移動し、改行する際には視線は次の行を簡単に見つけられるのだが、左から右へ視線を移動して改行する際には一瞬戸惑うこともある。もちろん、私個人の意見ではあるのだが。

 それをける目的もあり、空行を挟んでいるのである。


 空行や改行は目を休ませるポイント。ゲームで言うところの簡易セーブポイントなのだと思われる。

 基本、文章の途中で目を離すことはしないはず。話の切れ目で休憩を挟むだろう。

 だからこそ適度にセーブポイントを作ってあげるのも作者の配慮なのだと考える。

 ただし、特殊なことがない限り空行は一行にするのが好ましい。

 それ以上は逆に間が伸びるだけ。セーブポイントなのだから一行あれば十分なのである。


 そして、会話の間も空行は入れない。会話は会話で固めるべきである。

 会話とはテンポが重要だ。言葉のキャッチボールが普通なのだろう。

 それなのに会話の間に空行が入ると完全にテンポ感が崩れるのだ。

 空行は一瞬で読み飛ばすから何も感じないのかも知れないが、一行分の『あ』でも脳内で再生すると理解できるかも知れない。本来それくらいの時間を有するのが空行である。

 つまり、会話の間に空行が入る場合。それを会話とは呼ばない。

 せいぜいトランシーバーや無線機。はたまた糸電話などで一方通行な会話を相手に送り、数秒の間があってから相手の言葉が返ってくる。

 メールやツイッターの送受信を思い浮かべてみれば理解できるだろうか。

 目の前、もしくは電話口で会話をしているはずなのに、このように思えてしまうのである。



「さてと……」

「お、おい、本当に終わりなのか?」


 彼女は唐突に言葉を紡ぐと持ってきていた缶ジュースとお菓子をお盆に戻していた。

 そんな彼女に困惑ぎみに声をかける彼。

 確かに小説の基本ルールは終了だろう。しかし、それは基本でしかないはず。

 書き方を覚えたところで面白い小説など書けない。否、書ける気のしない彼。

 もっと色々と教わりたいと思っている矢先の彼女の行動。

「ここまで覚えたんだから、残りは自分で書いていくうちに上達するよ?」などと突き放されても困るだけである。 

 そんな彼の困惑の表情に軽く笑みを溢した彼女は。


「いや、だって、そろそろ夕飯の支度をしないとぉ~」

「……え? ……ぁ……」


 苦笑いを浮かべて彼に言葉を送っていた。

 彼女の言葉に彼は窓の外を眺める。

 始めた頃には眩しい日差しが降り注いでいた窓も、すっかりと赤く染められていた。

 この家庭では主に彼女が家事をこなしている。

 つまり、この時間あたりから夕飯の支度をするのが当たり前なのだった。


「それじゃあ、お兄ちゃん……」

「お、おう……」


 窓の外を眺めていた彼の鼓膜に彼女の言葉が響いてくる。

 ハッと彼女の方へ視線を向けた彼女。既に彼女はお盆を持って扉を開けた状態で扉の前で振り返っていたのだった。


「メモ帳は、たぶんまだまだ書き足していくだろうからぁ~、今は清書しなくていいよぉ~」

「……ぁ……」


 彼女の言葉に心なしかホッとする彼。

 まだまだ書き足していく。それは終わりじゃないことを意味するから。


「とりあえず、今覚えたことを踏まえて、できるところまでで大丈夫だから……自分の小説を修正しておいてね? 次は、それを読みながら教えていくよぉ」

「お、おう!」

「じゃあねぇ♪ ……」


 それだけを言い残すと彼女は扉を閉めたのだった。


「――ッ! ふぅ……よし、やるか! ……」


 まだまだ続く。そんな安心感から、やる気になっていた彼。

 自分に活を入れるべく両手で自分の頬を引っぱたいてから立ち上がり机に向かう彼。

 数時間前とは比べ物にならないほどに小説へと向き合う彼なのであった。



※さて、これにて基本ルールは終了であります。

 長々とお付き合い、大変感謝しております。

 今後は小説の内容部分に踏み込んだ項目を書いていこうと思います。

 とは言え、あくまでも私個人の意識していること。心がけていることを書くまでです。

 正解ではありません。これを守ったところで高評価は得られません。必ずしも面白くなるとも思えません。

 ただ、自分なりには納得のいく作品が描けるのではないかと思います。あくまでも私の考えですが。

 その為、最初に断っておきますが。

 プロットの書き方についての項目は存在しませんので悪しからず。

 生まれてこの方プロットと呼ばれるものを作ったことがない人間には理解の範囲外なのであります。

 そこだけはご了承願います。


 基本ルールは誰もが書き方講座で書かれる項目なので、ここまでは読んでほしいところではあります。

 しかし、今後については、ここまでの小説を読んでいただいた上で判断していただきたく思います。

 はい、あくまでも「こんな小説を書いている人間の講座」に過ぎませんから。

 よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る