#4


 「正気しょうきか?」


 「死闘もじゃんけんも同じだ。勝負は勝負だろ?」


 それでいいのか。ラウスは頭を掻いた。








 ──船着き場。ハガンは迫る時間にイライラしていた。


 「あのバカ!早くしねぇと船が来ちまうじゃねぇか……」


 痺れを切らしてレインを探すことにした。







 「じゃーん、けーん……」


 「ぽん!」


 「ほい!」


 二人はグーを出した。というより、グーしか出さない為、決着がつかないでいた。


 「お前、じゃんけんの時、ほいって言うんだな」


 「ふん、ぽいっなんて恥ずかしくて言えないな」


 二人は拳を隠した。


 「じゃーん、けーん……」


 「まじで、何やってんだ?お前ら」


 ハガンが二人のやっている事に心底呆れていた。


 「お、ハガン。こいつを倒すまで待っててくれ」


 じゃんけんをしているのは分かる。だが、しばらく観察していると、二人はグーしか出していない。船はもうすぐ到着する。これを逃せば三日間この町に留まらなければならなくなる。


 ハガンはレインに耳打ちした。


 「パーを出せ」


 「男はグーしか知らないんだよ、アホかお前は」


 こいつはダメだ。次いでラウスに耳打ちした。


 「あいつはグーしか出さない。パーを出せば勝てるぜ」


 「お前は分かってないな。女はグーで戦うものだ」


 ダメだこいつら。


 「なんなんだよ、おめぇらはよぉ!意味分かんねぇだよ!なんでグーしか出さねぇのに勝つ気満々なんだよ!」


 レインがビクッと身体を硬直させた。


 「俺がグーしか出さないって、教えちゃダメだろ!」


 「教えなくてもラウスは気付いてんだよ!バカ!」


 ラウスはもじもじし始めた。


 「あ?あ、あぁ、いや。勿論」


 ハガンは絶望した。バカとバカ女のじゃんけんは、この世の終わりに等しい行為だと学んだ。


 「もう……いい。心ゆくまでやってくれ」


 ハガンはいつまでも続くじゃんけんと、遠ざかる船を見送った。







 

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