5-2 最後の秘密作業

第67話 そして、病院で

「凄すぎる。昭和モダンの中二病という感じで」

 自分で言ってまた笑ってしまった。

 そう、正に昭和モダンの中二病だ。

「そうかなあ。色々研究して考えたんだけれどなあ」

 自覚は無い模様。

 なお知佳は既に元の姿に戻っている。

 やはりあれは恥ずかしかったらしい。

 でも今、思い切り笑ったことで私の何かが吹っ飛んだような気がした。

 さいごのわだかまりというか、もやもやが。

 実は飛んだのは頭のネジかもしれないが、まあそれはそれでいいや。

「じゃあこんなところかな。取り敢えず病院12時2分ね」

「うん。詳細は後でメモして送っておくから。あとそうだ、このインストールボタンを押しておいて。このソフトの更新で新しい目覚ましソフトを自動で入れるから」

「わかった」

 そのままVRで選んで、選択する。

「押しておいたよ」

「ありがとう。ならこれで目覚めるまでは大丈夫かな」

 よし。それならば。

「それじゃそれに備えて今から少しでも寝ておくね。何か眠くなってきた」

「わかった。それじゃ私も通信を切るね」

「じゃあ、またね」

 またね、と安心して言える。

 私はVRコネクタのスイッチを切って、頭から外す。


 バス代がもったいないので自転車で、30分近く使って病院まで行った。

 自転車は念の為自転車置き場の奥の方へ。

 私の自転車を知っている人がここを見る事は無いと思うけれど。

 病院1階の売店で11時55分まで時間を潰す。

 そしてスマホの電池残量を確認してから、エレベーターで上へ。

 8階では無く1つ上の9階で降りる。

 間違ったような顔をして階段に行って、階段の踊り場で時間を確認。

 12時まであと1分。

 まだかなまだかなと思いながら時計を見て。

 12時2分になったので階段を降りて。

 さっと廊下の左右を見る。

 おばさん達はいない。

 ナースステーションに行って素早く名前を書いて。

 そしてまずは知佳の病室をさっとのぞく。

 誰もいない、よし。

 スマホをONにして例のアプリを起動。

『コネクタを接続して知佳にセットして下さい』

 周りの気配を気にしながら素早くやる。

 コネクタのスイッチをON。

『脳波を確認しました。治療開始します』

 よし。

 カーテンの影に隠れながら外とスマホを交互に見る。

『処理実施中、あと88%』

 パーセントの数字が減っていくのが遅く感じる。

 手に汗をかいているのがわかる。

 大丈夫、落ち着け私。

 おばさんはいないし、すぐには帰ってこない。

 他の人もここの部屋にはいない。

 そう自分に言い聞かせる。

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