第5章 誰も知らない戦争 B Side
5-1 誰も知らない戦争
第59話 開始
日付が5月5日から5月6日になる。
パソコンの
地図の方は世界の主な通信ネットワークの混雑状況。
円グラフはルートサーバ群の負荷状況だ。
「どうせなら戦いが目に見えた方がわかりやすいでしょ。他にも敵に乗っ取られた不法プログラム配布サーバの数とか色々あるけれどね。
要はルートサーバ群が落ちればこっちの負け。落ちなければこっちの勝ち」
そう言って知佳が作ってくれたものだ。
「何時までも攻撃を継続するという事は無いの」
疑問を知佳に聞いてみる。
「ルートサーバを管理する人間も時間が経てば対策を講じる。特定ポートの一時停止や特定の通信の遮断とか。私達も不正プログラムを発見次第潰すしね。だから同じ方法で無限に攻撃を続ける事は出来ないかな。攻撃の勢いが収まる時点まで耐えられれば、こっちの勝利になるよ」
音声はSNSの複数通話モードにしてある。
私と知佳、そして三崎君が会話出来るように。
「敵が乗っ取ったと思っているサーバの乗っ取り返し、及び敵のサーバ群に攻撃を開始した。向こうが攻撃を開始するのは9時間後、
ちょっと疑問があるので聞いてみる。
「作戦というか、三崎君と知佳はどういう感じで戦っているの。同じ事を2人で分担しているの。それとも違う事をやっているの」
「担当しているのは違う作戦ね。大雑把に言うと聡が攻撃、私が防御担当かな。敵サーバ側の乗っ取り等の攻撃は聡。私はルートサーバ群に攻撃を仕掛けた
「知佳の方がこの世界が長い分、複雑な処理に慣れているからさ。あとは状態にあわせてお互いの
その辺はコンピュータというか、プログラムなんだなと思う。
それでも三崎君と何かを共有出来るのが羨ましかったりして。
我ながらいちいちそんな反応をしてしまうのが情けないというか悲しいけれど。
円グラフのうちいくつか、赤い部分が増え始めた。
「私も対応を始めたよ。まだ
「ごめん、南米に対策していない配布サーバがあった。今塞いだ」
円グラフの赤い部分が減少しはじめる。
一段落、という訳か。
「取り敢えず増加は止まったかな。でも前哨戦にも入っていない状態だよきっと」
「だよな」
2人のやりとり。
私には感知出来ない世界の話だ。
いや、例え目で見えたにせよ速度的に対応出来ないだろう。
私が話している2人の人格は既に違う存在になっている。
それをひしひしと感じてしまう。
まだ0時を5分過ぎた程度なのだけれど。
「メイ、お願い」
知佳の声。
「何?」
「この先敵の攻撃が激しくなると、この応答につかっている
その時はパソコンの方のモニターを確認して。私からのメッセージが表示されるようになっているから」
「わかった。でもそうならないことを祈るよ」
「そうだね」
そう言ったところで。
「来たぞ」
三崎君の声。
いくつかの円グラフの赤い部分が一気に動いた。
少しだけだけれど、確かに。
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