4-3 意志と意地と約束と
第52話 何となく、お出かけ
ふと時計を見る。
まだ午前10時前だった事に気づいた。
普通の人の一日はまだ始まったばかり。
休日、それも4連休始まりの午前10時。
しかもカーテンの外は見事なまでの五月晴れ。
なのに何だろう。
私のこの気分の重さは。
実際は何も起こっていいないし変わりもしていない。
いや、三崎君が昨日意識不明になったんだった。
でも気の重さはそのせいじゃ無い。
こういうときの気分転換の方法は、身体を無理矢理動かすに限る。
人間は動物だ。
思考だって行動に引きずられる。
幸い天気もいいし風もなさそうだ。
ちょっと自転車でも乗って散歩しよう。
いわゆるポタリングと言う奴だ。
顔を洗い直して、歯を磨いて、髪を整えて薄くリップを塗る。
さっきより少しはましな顔になったかな。
ポロシャツとちょい裾短目のパンツはいて、小さめディパック持って。
「行ってきます」
親に一声かけて家を出る。
適当に自転車を漕ぎはじめる。
最初は図書館でも行こうか、そう思っていたけれど直ぐに気が変わった。
どうせなら病院に行ってやろう。
知佳の言う通りなら三崎君はこの休み終わりに目を覚ます。
だからこれはチャンスだ。
三崎君の寝ている姿をまじまじと見てやる。
落ち込んだ後の揺り戻しというのか、ちょっとハイな気分で自転車を漕ぐ。
私の自転車は一件普通の小型自転車に見える。
でも実はうちの父の趣味でカナダ製。
11段変速かつ総重量10キロ以下という冗談みたいな性能だ。
元々は父が改造し尽くした遊び用の自転車。
それを私が横取りして自分用にしたものだ。
本気で走るとかなり速くて気分転換にもってこい。
そんな訳で車の少ない車道で全力疾走。
携帯電話のGPSでは35キロちょっと。
三崎君のスポーツ自転車に負けない程度……はちょっと無理か。
体力が違う。
この速度を持続するのはちょっと無理だ。
それでも広い通りを30分も走れば目的地。
馬久協和病院に到着する。
病院まで来てから気づいた。
今日の午前中は検査だった。
ちなみに今は11時過ぎ。
まあいい。
一度知佳の病室へ行って様子を見てから行こう。
それに知佳のところに寄れば三崎君の病室とかが判明するだろう。
不思議な強気姿勢のまま。
私は自転車を止め。
ワイヤー錠2個で前後車輪をロックして。
もう何度となく通ったルートで8階へ。
8階の知佳の病室をのぞいてみて、予想外に人がいてちょっと驚く。
まず、知佳のお母さんは想定内。
三崎君のお母さんもぎりぎりで想定内。
だがもう1人、高校の担任までは想定していなかった。
高校の担任は中年入りかけのおっさん。
身長180センチ超えで人相があまり良くないが悪い人じゃ無い。
担任としては当たりの方だ。
ただこの場にいられると反応に困る。
でも向こうにも姿を見られたし、今更戻る訳にも行かない。
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