第20話 個人情報の取得方法

「まずは最初の停電企図、それに気づいたところから話をしよう。

 元々はある反政府系社会運動家の『呟き』ソフトでの会話がきっかけだ。

 『今年中には色々事件が起きて**も不信任される』

 そんな内容からはじまる一連の呟きさ。

 妙に自信ありげだなと思って、ちょいとこいつの身辺を調べてみた。

 まずはこいつの呟きをフォローしたり相互フォローしている連中の調査な。呟きを全部確認して、その発言に関連しそうな数名をピックアップ。公開情報から運動家本人とその数名の身元を割り出してみた訳だ。

 次の段階として、こいつらに興味を持たれそうなメールをいくつか送らせて貰った。SNS上の友人からのメールに見せかけたり、メールマガジンの宣伝風にしたり、プライベートSNSへのお誘いなりまあ色々な。

 結果、そのうち数人がメールを開いた。その結果、開いた彼らのパソコンは無防備状態になった。メールのIDとパスワード、他色々な個人情報が明らかになったという訳だ」

「メールを見るだけでもアウトなのか」

 花月朗は頷く。

「彼のメーラーはWeb形式のメールが表示されるようになっていた。テキスト形式で表示するようになっていたり、Webメールでも画像やスクリプト、リモートコンテンツを表示しない設定にしていれば別だけれどな。そこまで用心する奴はそれほどいない」

 なかなかに怖い世界だ。

 僕も気を付けよう。 

「そんな訳で彼のメールボックスは確認出来るようになった。そのうち一部に具体的な犯罪計画が出てきた訳だ。それが最初の停電事案さ」

「なるほど」

 流れは理解出来た。

「他の事案も基本的に同じ。

 最初に調べた社会運動家、まあ実態はアジテーターなんだが、こいつの分析で色々な繋がりが出てきた訳だ」

 知らない単語が出てきた。

「アジテーターとは何だ」

「日本語だと扇動者だな。社会運動だの何だので群衆を煽って、自分の社会的政治的信条を遂げようという連中だ。本人達は社会運動家とか思想家とか、場合によっては学者だとか名乗っているけれどな」

 確かにそんなの、結構いるな。

「そして出てきたネットワークと関係者を更に調査。結果色々な処から資本提供を受けていて、うち主要な資金元の1つに某国団体系の企業が出てきた。

 現在、日本の政権は某国に対してはかなり強気に出ている。ただ日本は侵攻系の軍隊を持たないからな。出来る事は経済的制裁か、軍隊を持つ他国、例えば米国と協議して動いて貰うしかないがな。その辺の活動が某国にとっては色々と目障りらしい。だからより某国に対して柔和な政権になるよう、色々工作をしている訳だ。

 そのネットワークの少なくとも一部が明らかになった。

 特に某国は最近国際情勢上色々立場が悪くてな。工作も活発になっている。

 だから仕方なく私が潰せるものは潰している訳だ」 

 なるほど。

 花月朗の動きがこれで大体理解出来た。

「なお侵入した際、彼らのパソコンやスマホにはバックドアなり便利なソフトなりを仕掛けておいた。これで何時でも確認可能だ。ほとんどの奴らはそれほど知識があるようじゃ無かったからな。疑うどころか確認する方法すら知らない状態だ。未だに色々使用可能だし、情報も送られてくる状態だよ」

 なかなか恐ろしい事になっている。

 そんな事を言われると、ちょっと自分のスマホやPCまで怖くなってきた。

「僕のスマホやパソコンは大丈夫だよな」

「何処までを大丈夫と言っていいかが問題だな」

 花月朗は肩をすくめてみせる。

「位置連動ゲームが入っていれば現在位置はゲーム会社に筒抜け。スマホ決済で買い物をすれば何時何処で何を買ったか記録される。

 どこぞ製のスマホはスパイ回路が物理的に仕掛けてあるなんて話もあるな。これはソフトでは無いから無効化出来ない。

 大なり小なり現代社会なんてそんなもの。まあ気をつけることだ」

 僕が想像する以上にこの世界、面倒くさい事になっているらしい。

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