第17話 変電所侵入
扉の向こう側を見る。
最初は非常階段等によくある鉄製の階段だ。
扉を音がしないようゆっくり閉めて、階段を降り始める。
降りるとどうしても少し振動なり音が出て不安になる。
無人だと花月朗は言っていたのだけれども。
踊り場を曲がって階段を降りてを何度も何度も繰り返す。
かなり長いというか深い。
どう考えても6階分か7階分を降りたなと思う頃、やっと終点の踊り場が見えた。
その先はまた扉だ。
「まだ電波は通じている、状況には異常なし。内部も無人」
花月朗の言葉でほっと安心。
この状況での報告はなかなかありがたい。
「サンクス」
花月朗に軽く礼を言って、目の前の扉を開ける。
ぱっと目には何か秘密基地の司令所という感じの場所だ。
指令卓と制御卓、そして大きなパネルが何かを表示している。
「これが制御室だな」
「ああ。予定通り左側から回れ」
まだ電波は通じているらしい。
よしよし。
「了解」
図を見て何度も確認したとおりのルートで近寄る。
これは監視カメラ対策と同時に高圧電線対策だ。
大丈夫だとは思うが出来れば近寄りたくないから。
予定のスチールラックの裏側に回ってほっと一息。
カバンから細工済みのUSB機器2つを取り出す。
USBタイマーのモードを目視で確認。
ちゃんと設定通りになっている。
このUSBタイマーの先にUSBメモリを接続。
念の為これらの機器の表面をもう一度軍手で拭いておく。
一応家で指紋は消してきたのだが、まあおまじないだ。
上から3番目の機器には確かにUSB用の差し込み口がついていた。
複数あるうちのどれでもいい。
そう花月朗は言っていたが一応確認。
特に何も無く0、1、2、3と番号が振ってある。
周りの機器やコードと干渉せず、機器がつけやすそうだった1番を選択。
今用意した長いUSBメモリ一式を差し込む。
USB側のLEDはつかないがこれで正常。
タイマーである時間になると自動で接続されるようになっている。
今はまだUSBは電気的に『接続されていない』状態なのだ。
確実に差し込んだのを確認し、僕は来たルートを戻る。
「差し込みは終了したな」
花月朗の声。
ここから電波が入る模様だ。
「ああ、予定通り上から3番目のUSB差し込み口に差し込んだ。0から3まで4つ口があったから1番に差し込んだ。それで問題無いな」
「それでOKだ。あとは外へ出るだけ。ドアを開ける前にこっちに声で連絡しろ。外の状況を付近のカメラで確認する」
「頼む」
扉を閉めて階段へ。
2段おきくらいで走るようにのぼる。
無人なのがわかっているから音はもう気にしない。
階段が長いおかげでちょっと息が乱れるが、速度は落とさない。
出来ればこんな場所は早く脱出したいから。
「もうすぐ出口だ。どうだ」
「待て。散歩中の老人がこっちに向かって歩いてくる。やり過ごしてからだ」
「わかった」
息を整える。
気持ちは落ち着かない。
こんな場所は早く出たいのだ。
時間が経つのが遅い気も早い気もする。
早く通り過ぎてくれ。
早く……
「よし、出来るだけそっと開けろ」
花月朗からの許可が出た。
言われたとおりそっと扉を開ける。
外の風が吹き込んできた。
光が眩しい。
さっと外に出て、静かに扉を閉める。
視界の右端で老人1名。
こっちに気づかずに歩き去って行くのが見えた。
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