1-2 停電・騒擾狙い事案
第15話 停電・騒擾狙い事案
「大変言いにくいのだが、次の作戦には資金が必要になる」
いつもと同じ有明オープンテラスの一角で花月朗がそんな事を言った。
「資金と言ってもな。一介の高校生にはそんなに金は無いぞ」
あらかじめ言っておく。
確かに僕は普通の高校生よりはある程度お金に自由がきく。
両親ともに共働きなので食事の買い物は僕の役目。
その費用を誤魔化せば少しくらいは何とか出来る。
ただ資金というにはほど遠い。
「大丈夫、聡君の懐具合は知っている。今回必要な資金は4000円程度だ。必要なのは往復の交通費と必要部品代」
奴め、僕の出せる金額を把握した上で言っているな。
僕はそう悟った。
確かにそれ位の金額なら出せない事は無い。
最近は小遣いもほとんど使っていないし。
週に1度のプリン代くらいだ。
「どうせそっちで用立てると犯罪になるというんだろう」
「その通り。私は現実の人間では無いからな。財布など持っていない」
堂々と言われたので反論してやる。
「何ならシェアウェアでも作って少し稼いだらどうだ。効率は悪そうだが財布無しでは困る事もあるだろう」
「確かにそうだ。今後の検討課題としよう」
そう言って奴は頷いた。
「ただ今回は間に合わない。それは了承してくれ」
まあそうだろうな。
「仕方ない。で何故必要なんだ」
「今回は『仕掛けに気づかせる』という方法論を採りたい。実は計画されているテロ手段が手製爆薬なのでな。その爆発の前に当局等に気づいて貰うという事になる。
ただ、たれ込み電話で一般人が入れないところの情報等を流したとしてもだ。それを信じてくれる可能性は高くない。ならば『機器に異常』な状態を作り出して嫌でも点検させるようにした方がいい。無論たれ込みも併用するがな」
「なるほどな。それで事案そのものはどんな感じなんだ」
「奴らが狙っているのは停電、そして騒擾事案だ」
騒擾とはまた聞き慣れない言葉だ。
「具体的にはどんな感じだ?」
「奴らの具体的な計画で言うとだ。
まず新宿のその付近をデモが通る。
これは既に計画を申請して受理されているらしい。
そしてデモがある程度進んだところで付近一帯を停電させる。
混乱状態を作ると共に付近に配置した連中が暴れ回る。
混乱と集団心理から暴動に近い状況を作り出す。そういう計画だ」
暴動か、なかなか悪質だ。
しかし疑問がある。
「そんな事をやって何の得になるんだ?」
僕には思いつかない。
「色々あるらしいな。
世間全体が治安だの政治だのに不安感を覚えるとか。
この不手際を政権を攻める材料にするとか。
日本ではこういう手段はあまり使われない。でも海外では結構ある手段のひとつだ。なおデモと暴動勢力は対立団体の場合もある。だから話はなかなか面倒くさい。
まあ私の対応は停電阻止、それだけだがな。あとは警察が何とかするだろう」
何となくだけれど理解した。
理屈としては納得出来ないけれど。
「世の中には色々無駄な事を考える処もあるんだな」
率直な僕の感想だ。
「権力争いというか、こういった事案すら飯の種という連中もいる訳だ。それを国外の連中が指導なり資金提供なりしていたりする。日本の基盤が揺らぐ事は彼らにとっては利益だからな。
まったくもって
花月朗は内ポケットから封書を出して僕に渡した。
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