第3話 確認、そして再会

 翌日午前6時35分。

 パソコンはネットから外して起動している。

 画面に出ているのは電源電圧測定ソフト。

 ACアダプタを通しているのではっきりとした値は出ない。

 でも参考にはなるだろう。

 また部屋のLED照明をつけっぱなしにもしている。

 白熱灯より電源断の反応が早そうな感じがするから。

 そして。

 目覚ましの電波時計が6時40分を告げる。

 照明が瞬くように一瞬消えた。

 パソコンからも電源電圧が下降し、元に戻ったとの表示を確認出来た。

 つまりあのアナクロスタイルの怪人が言った事。

 その一部は少なくとも事実だった訳だ。

 だからと言ってあの怪人の言葉全てが事実とは限らない。

 それでも僕は話だけは聞く気になっていた。


 午後17時05分。

 高校から帰ってきた僕はVRアダプタをパソコンに接続する。

 普段は昼休みにもスマホにVRアダプタをつけWeb閲覧をしている。

 でも今日はしていない。

 出来るだけ花月朗との接触に気を使いたかったから。

 他の事象を気にしながらでは気づくべき事項にも気づけないだろう。


 VRアダプタを装着してネットに接続。

 瞬間、世界が変異する。

 擬似的バーチャルな五感が感じるのは自分のプライベート部屋フォルダ

 僕のデフォルト位置だ。

 流石にここには奴はいない。

 僕は移動する。

 自分のプライベート部屋フォルダからネットワーク上へ。

 場所はどこがいいだろう。

 相手の手の内で無く、監視も厳しくない場所。

 とりあえず近所の公園を散策してみる。

 市の市立公園案内の中の1場面コンテンツだ。

 奴は待ち合わせ時間や場所を指定しなかった。

 それはいつでも会いに行けるぞという奴の自信の表れ。

 少なくとも僕はそう受け取った。

 監視プログラムがあるのか特殊な検索機能サーチエンジンがあるのか。

 いずれにせよ、こうやって公開されたオープンな場所コンテンツに来ていれば。

 奴は自分からやってくる筈だ。

 この場所はユーザがあまり多くない

 人影アバターは何かを探している風の老人と、僕と同じくらいの女子。

 その2人だけだ。

 女子が僕の近くへとやってくる。

 僕と同じ高校の制服を着ているが知らない顔。

 バッチの色からすると同学年の筈なのだが。

 彼女は僕の方へ歩いてくると。

「こんにちは」

 と言うと共に肩に片紐だけかけて下げていたディパックの中を開く。

 金色の仮面が入っているのが見えた。

 奴だ。

「随分姿形が違うな」

「この方が目立たなくていいわ。どうせこの世界、外見なんて只のデータよ」

 声や言葉は姿形にあったもの。

 でも彼女の言い分は正しい。

 所詮この世界では外見や声など只のデータ。

 そしてこの少女は間違いなく奴、花月朗だ。

 証拠はさっきの仮面だけ。

 でも僕のカンはそう言っている。

「随分遅かったわね。いつもは昼休みにもVRしていると思ったけれど」

「色々確認したかったからさ。時間に余裕を持ちたかった」

「その慎重さは悪くないわ」

 彼女は頷く。

「なら何でも確認して。でもその前に場所アドレスを変えない?ここは話に適した場所では無いと思うわ」

「何処がいい」

「どこでも、任せるわ」

 ならば。

 僕はある場所アドレスを提案する。

 ここより自由で監視の可能性が少ない。

 ある意味花月朗に適していそうな場所だ。

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