第13話
リイラが城から居なくなったことに最初に気付いたのは、アイリスだった。
ティータイムを小一時間程過ぎた頃、いつもの時間にお茶を準備できなかったことを詫びようとしていた。
リイラのいた客室へ入り、リイラの存在がないことに気付いた。バルコニーの扉が開いていたため、客室のある二階から外へ飛び降りたのかと思い魔力をつかって周囲を探す。みつからない。城内で迷子になっている可能性も考え、城中を探すがみつからない。
いよいよ万事休す、というところで魔王の会議が終わったようだった。アイリスは魔王のもとへ向かう。
コンコン
アイリスが魔王の執務室の大きな扉をノックすると、スーっと音もなく扉が開く。
「失礼します。」
「どうした?」
「リイラ様の姿が見えません。」
「いつから?」
「昼食の時にお会いしたのが最後で、16時過ぎにお部屋へ伺ったところいらっしゃらなかったです。」
「…早く見つけろ。」
「はい、…失礼しました。」
報告を終えたアイリスは速やかに退室し、再びリイラを探しに行く。
リイラ以外の者と話すときのミカは、例外なくまるで道端の石ころを見るような何の興味関心もない視線で相手をみた。しかしアイリスの報告を受けたミカは、この世で最も汚いものを見るような、とても不快そうな目付きになっていた。いずれも、フードに被われていて周りからは見えなかった。
この時のミカは、リイラはすぐに見付かると思っていた。それに、リイラを自分だけのものにしたい、と思っていたことに気付いていなかった。
リイラが居なくなって1ヶ月が経ち、今日もミカはアイリスから、リイラが見付からなかったと報告を受けた。
リイラの捜索は主にアイリスが行っており、ミカは城周辺を簡単に探しただけだった。
ミカは、無意識にリイラの使用していた客室へ向かっていた。
部屋に入ると、うっすらとリイラの気配を感じる。その気配を追っていくとベッドだった。ベッドへ横たわる。
「リイラ…」
1か月振りにリイラを感じたミカは深い安心感に包まれるとともに、この1か月ずっと飢え、焦燥感に駆られていたことに気がついた。
そのまま暫く休んだ後で、よりリイラの気配を感じる方へ目を向ける。
故意か不注意か、リイラの銀髪が1本、残されていた。大切な宝物を扱うように、優しく手に取る。
ミカは、リイラの銀髪が好きだった。
リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ、リイラ
ミカは初めて、自分で自分を慰めた。
それでも高ぶった気持ちは静まらず、満足そうに眺めたあとで銀髪を非常に美味しそうに食べた。
『リイラ…、俺のリイラ』
この日から、ミカは本気でリイラを探し始めた。
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