第8話

リイラが目覚めたこと、ミカに会いたがっていることは、まもなくミカに伝えられた。

ミカはリイラの様子に興味がなかった訳ではないが、リイラが自分の城にいると思うとそれだけで満足だった。

リイラの血液を食したことで、気分は高揚していた。


リイラは途方に暮れていた。

目覚めた日に陛下に会いたいと言って以降、連日アイリスに訴えていたが陛下とは会えないまま。

もちろん、帰宅を希望した時のアイリスの反応も「陛下の許可が必要です」の一点張りで変わらない。

勝手に帰ろうと思った時もあったが、決まってアイリスに声を掛けられるのでタイミングを逃し続けていた。

リイラの側にはアイリスが控えており、家事はもちろんのこと着替えや入浴の手伝いまで行われた。

リイラは身分の高い者と違って自分で何でもできたが、アイリスが一歩も引かなかったので、すべてアイリスの手伝いを受けることになっていった。


そんなリイラの様子を知ってか知らずか、アイリスはリイラの気が紛れるようなこと、例えば書庫へ案内してくれる等を提案してくれた。

今日は、庭を見に行く約束をしていた。

リイラは、久しぶりにワクワクしていた。

森での生活では外で過ごす時間が長く、畑仕事もしていたのだ。

城に来てから一度も外に出ておらず、バルコニーで気分転換をするくらいだったので、楽しみにしていた。


「わあ!綺麗!」

「お気に召したようで良かったです。」


城の庭は広く、色とりどりの森では見られない花が咲き乱れていた。


「いくつか摘んでいきましょうか。お部屋に飾ることもできますよ。」

「いいんですか?嬉しいです!」


アイリスの許可を得て、夢中で花を摘んでいたところで声を掛けられる。


「こんにちは。綺麗な花ですね。」

「あ、こんにちは。」


声をかけてきたのは人懐こい男の人で、南方からの行商人だった。

商売の話をしに来たが、魔王の都合が悪く謁見出来なかったので、日を改めて出直す予定になったと言う。

そのため時間に余裕があるようで、南方地方の話や商売の話をおもしろおかしく語って聞かせてくれた。

男は話上手で、リイラは次第に話に引き込まれていった。


アイリスは魔力で、魔王に呼ばれたことに気が付いた。

魔王は対象者だけに呼び掛けることができた。

「ちょっと待ってて下さい。」

そう言い残し、アイリスは魔王の元へ向かった。


庭からリイラの気配を感じ、ミカは何気なく外を見た。

そこで、リイラと男が楽しそうに話していて不快になる。


なぜ俺以外の男に笑顔を見せている?

なぜ俺以外の男と話している?

なぜ俺以外の男を見る?


すぐにアイリスを呼び、リイラを部屋から出すことを禁じた。

リイラは訳も分からぬまま、客室で軟禁された状態になった。

そのため再三、陛下への面会を求めたのだった。

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