第五話 笠○ぞう 糸
超破渦将軍の前に立ったウラシマは、その締まりのない顔から不敵な笑みを浮かべます。
「世界中の美女と交流うぅ~? 秘密を覗き放題いぃ~? はん! 笑いどころか屁すらでねぇわ!」
『な、なんだとぉ!』
”おおっ!”っとウラシマらしからぬ
「世界中の美女と言ってもしょせん、モニター越しの絵に描いた餅よ! たとえ
『!』
それを聞いたオオアリクイの子供達が
「す、すげぇ。やっぱウラシマさんパネェぜ!」
「”一皮むける”ってまさにこのことだよな!」
「カッケェ~! 俺ら一生ついて行きます!」
調子に乗ったウラシマは拳を握りしめます。
「ハッカーだか
言葉と同時に、ウラシマの体が前へと跳び、固く握られた拳が超破禍将軍に向けて放たれます!
”おおおおっ!”とさらにウラシマらしからぬ行動に、一同、一瞬期待します! ……が
”へろへろへろ……ぽふっ!”
っと、ウラシマの拳は超破禍将軍の体に”触りました”。
「え……あ……こ、こんな所にホコリが」
”あ~あ”と、期待した自分たちが馬鹿だったように、一同ため息を漏らします。
『そうか、それはご苦労。では褒美をやらなくてはな』
超破禍将軍は親指と中指をくっつけると、ウラシマの
”ビシシイイィィ!!”
「ぐわあぁぁ!」
デコピンによってウラシマの体は後ろへ飛んでゆき、
「ウラシマぁ!」
すぐさまオトヒメが、飛んできたウラシマの体を受け止めます。
「オ、オトヒメ。ぼ、僕はがんばったよ……」
「ええ、貴方は立派だったわ。……じゃあ、”ご褒美”をあげなくてはね」
オトヒメの顔が妖しくニヤケ、”パチン!”と指を鳴らすと、まるで条件反射のようにウラシマの体は犬のように四つん這いになり、だらしなく口を開け、”ハァハァ”と息をしながら舌を出します。
そして、ウラシマの背中にオトヒメが”ドスン!”と腰を下ろしました。
二人の姿を見た竹取の夫婦が不思議がります。
「な、なぁばあさんや。おまえ最近オトヒメさんと”めるとも”になったって言ってたよな。あれはなんじゃ?」
「ああ、旦那さんのウラシマさんについて相談された時、
『夫なんて尻に
って、あんな画像と一緒に返信したのよ。さすがオトヒメさんね、もう”実行”されたみたい」
(明らかに違うと思うが、ワシは黙ってた方がいいな)
竹取の翁は、喉まで出かかっていた言葉を飲み込みました。
「あ~あ、やっぱりウラシマはウラシマだったか……」
「なぁ、結婚ってなんだろうな?」
「さぁ? でも本人が喜んでいるからアレでいいんじゃね?」
オオアリクイの子供達は、ウラシマの姿を見て人生について語りあいました。
超破禍将軍の体から漆黒の妖気が噴き上がります!
『どうやら茶番はこれまでのようだな。こうなれば力尽くで貴様らを排除し、幕府そのものを乗っ取ってくれるわぁ!』
一同に恐怖と緊張が走ります。しかし、災刃坊主が皆を奮起します。
「
『ほう……いつ我が一人と言ったかな?』
「なにぃ!」
『自己増殖!』
音もなく、超破禍将軍の体は二つに分裂しました。
「!!」
『安心せい! まだまだ増えるぞ!』
二人が四人、四人が八人、八人が十六人、十六人が三十二人と、災刃坊主や金色笠男達の前でどんどん増えていきました。
『わぁっはっはっはっは! どうじゃ。恐れ入ったか!』
思わず後ずさりする金色笠男ですが、その後ろから紅の忍びに扮した笠売りのおばあさんの声が耳に入りました。
「……ねぇねぇ、おじいさん」
「う、うむ! これが最後の戦いじゃ! 四万手救、いくぞ!」
『おう!』
「ちょっとおじいさん、話を聞いて下さいよ」
「おっと、すまんかった。どうしたんじゃばあさんや、何かいい作戦でもあるのか?」
「いえね、超破禍将軍って人、幕府を倒して自分が将軍様になろうとしているんでしょ?」
「そうじゃが? 話を聞いていなかったのか?」
『あんなにいっぱい増えちゃって、一体どなたが将軍様になるのですかね?』
『『『へ?』』』
五百十二人まで増えた超破禍将軍は、笠売りのおばあさんの声を聞いて固まります。
『それはもちろん、最初のオリジナルであるこのワシが』
『なにを言う、オリジナルはワシじゃ』
『ワシこそオリジナルじゃ! みよ、先ほど
『冴えない』、
『目立たない』、
『取り柄がない』、
『甲斐性がない』、
『どうしようもない』、
『女に
『夫としても
さらに
『犬に成り下がって、人間としての自尊心すらない!』
の『八ない男』の……ウラシマという輩に触られたこの
『そんなのワシにだって付いておるわ!』
『ワシにだって!』
まさに
そこへ紅の忍びに
『どうせ私たちと戦うんですから、最後に生き残った人が超破禍将軍様になればよろしいんじゃありませんか?』
『おお! バスターレディーとやら、敵ながらそれは名案!』
『おまえ達を片付けたあとは、まさに天下一
「そういうのはめんどくさい……いえいえ、真の破禍将軍様ならそんな大人数で、わたし達と戦うなんて卑怯なことはしないと思いますが、いかがでしょうか?」
『うむ、それはおまえの言う通りじゃ。では”自称”超破禍将軍共! いまから
『『『うおおぉぉ~!』』』
”ドガッ!””ボガッ!””ズバッ!”バギィ!””ゴスッ!”
『ぐわっ! なんのこれしき!』
『なんとぉ! まだまだぁ!』
『おのれぇ~! ワシを後ろから殴った奴! 姿を見せい!』
『ええい! 真の破禍将軍は、このワシじゃぁ~!』
雄叫びと共に超破禍将軍達は、自分以外を手当たり次第どつき始めました!
目の前で起こり始めた突然の光景に、災刃坊主を始め、一同あっけにとられます。
金色笠男である笠売りのおじいさんも、もはや開いた口がふさがりません。
「なぁばあさんや、ばあさんの一言でとんでもないことになったのぅ……」
「あら、これでもちょっとは考えていたんですよ。でもまさか、こんなにうまくいくなんて思ってもみませんでした」
『ふむ、奥方殿、その策とは?』
四万手救がおばあさんに尋ねます。
「たいしたことないんですよ。鬼を退治する四万手救さんと、ばすたーれでぃーちゃんが一緒に戦うと誤作動を起こすって聞きましたから、だったら鬼である超破禍将軍さんがたくさん増えたら誤作動を起こすのかなって、ちょっと
『おばあちゃんすっごぉ~い!』
バスターレディーが歓喜の叫びを上げました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます