第五話 笠○ぞう 超
「じゃあばあさんや、いってくるよ」
「いってらっしゃい、おじいさん」
笠やザル、おばあさんが編んだわらじを背負ったおじいさんは、これまでと変わらず都の露天場所へと向かいます。
幸いにもあれから鬼が出たという騒ぎは起きていませんが、それでもおじいさんの懐には四万手救の魂を宿した金色のわらじを収めていました。
いつもより早く露天を切り上げたおじいさんは、かつてお地蔵様に笠を被せてあげた、あの小路へと向かいます。
「むぅ!」「やぁ!」「たぁ!」
小路から外れた森の中では、足に金色のわらじを履いたおじいさんが、まるで猿のように木から木へと飛び移っていました。
『
おじいさんが投げた笠は、金色に輝きながら木々の枝を切ってゆき、
『
素早く木の根元に飛び降りたおじいさんは、戻ってきた笠を
『必殺!
”ドゴォォーン!”
金色の流星と化したおじいさんの蹴りは、大きな岩を粉々に粉砕しました。
『いいぞ、|ゴールデンバンブーマン! 大分体が動くようになってきた』
四万手救はおじいさんのトレーニングについて、声を高めて感想を述べます。
「なぁに、おまえさんのおかげじゃよ。おっと、鍛錬に夢中でいつの間にか日が暮れてきたな。早く帰らないとおばあさんが心配してしまう」
日もすっかり暮れ、おじいさんとおばあさんは夕飯を食べます。
おじいさんからのお代わりに、おばあさんはうれしそうに茶碗にご飯をよそいます。
「最近、おじいさんの食が進んで、私もお夕飯の作りがいがありますわ」
「そ、そうか。なぁに、ばあさんの飯がうまいからな」
(さすがに、
おじいさんはそっと、窓辺に干してある金色のわらじに目をやりました。そして、米俵がしまってある押し入れへと目を移します。
(……まさかとは思うが、ワシが対鬼戦士になると見越して、お地蔵様はワシらにあんなお宝やご馳走を?)
あくる日。露天を早めに
『ゴールデンバンブーマン、ただちにあちらの街道へ向かってくれ!』
「ん? あっちは家とは反対側じゃが?」
『どうも鬼の気配、瘴気を感じるのだ!』
「なんと! それはすぐに向かわなくては!」
すぐさま金色のわらじを履き、人々の間を
「たしかこの先には、お役所が連なる『
『ああ、国衙のパソコンやサーバーを乗っ取る気だ!』
『お、鬼だぁ~!』
突如! 国衙の方角から叫び声が聞こえます。それと同時に民衆が津波のようにおじいさんに向かって逃げてきました。
「こ、これじゃ先に進めん! とぅ!」
軽々とジャンプしたおじいさんは、建物の屋根の上を走ります。
やがて国衙へと進む、数体の巨大鬼と数十体の鬼が見えてきました。
『
『
『
『
奇声を揚げながら国衙へと進撃する鬼の集団。
「鬼共を一歩も国衙へ近づけるなぁ!」
都の守護兵も槍や
「これはかなりの大軍じゃ! いくぞ!
黄金色に輝いたおじいさんの体が、屋根から屋根へ疾風のように駆けぬけます!
『破禍軍団もいよいよ本腰をあげてきたな。まともにぶつかれば不覚を取るやも知れぬ。まずは遠くから奴らの戦力をそぎ落とすのだ!』
「うむ! もう年寄りの冷や水とは言っておれぬな! 『
おじいさんは頭の笠、そして売れ残った笠を次々と鬼の群れへと放ちます!
「ワシの笠よ! 鬼の体を真っ二つにせい!」
”ヒュー!””ヒュウー!”
”ズバァァ!””ズバアァ!”
『ギャアア!』『GYAaa!』
”ボンッ!””ボフッ!”
切り刻まれた鬼達は断末魔の悲鳴を叫びながら爆発していきます!
今度は売れ残ったザルを左手の平の上に置くと、右手を上に重ね、手裏剣のように次々と飛ばします!
「『
”シュッ!””シュッ!”
”ブズッ!””ズブッ!”
『
『Урааааааа!』
”ボボンッ!””ドフンッ!”
漆黒の煙を
「だめじゃ! 数が多すぎてこれじゃあきりがないぞ!」
『落ち着くのだ! 鬼共の後方に回り込み、守護兵と前後で挟み撃ちして、鬼を滅するのだ!』
「わかった! お主の力、頼りにしておるぞ!」
おじいさんは鬼の軍勢の後ろに回り込み、後方から切断笠、笊手裏剣で鬼達を攻撃します。
”グオオォォ!”
巨大鬼の一匹がおじいさんに気がつき、振り向きざまその口から漆黒の炎を浴びせました!
「なんと! 『
おじいさんは急いで戻ってきた笠を体の前に掲げ、漆黒の炎から身を守ります。
「き、気のせいか!? 火を吐くなんて、この前の大鬼と比べて強くなっておるぞ?」
『ウイルスはまさに日々進化しておる。だからこそ鍛錬が必要だったのだ』
「くぅ~。やっぱり年寄りの冷や水じゃわい!」
大鬼からの炎が止まると、おじいさんはすぐさま腰の
『
金色に輝く小鉈を大鬼の頭上に切りつけると、
「ぬおおぉぉ!」
”ズバアァァァァ!”
金色の鉈の刃は大鬼の顔、首、胸、腹を一刀両断しました!
”ドッカァァーーン!”
黒い煙を撒き散らしながら爆発する大鬼に、劣勢になり士気が落ちていた守護兵達にも元気が戻ります。
「あの
”うおおぉぉぉ!”
鬼の軍勢を後方から蹴散らすおじいさんに、守護兵達も一刀、一突きごとに鬼を倒していきます。
「これでとどめじゃ!
『必殺!
光り輝く流星となったおじいさんは、最後の一匹となった大鬼の体を貫きました!
”ギャアァァァァァァァ!”
”ドッカアァァァーーン!”
大鬼の体が大爆発を起こし、辺り一帯に漆黒の煙が充満しました。
鬼がすべて滅すると、
”エイエイオォー!”
守護兵達は槍や薙刀、弓や太刀を掲げて勝ちどきの雄叫びを揚げました。
そんな中、おじいさんは黒い煙に
「む? あの
「確か、金色の笠を被っていたような?」
「おお、あの御方こそ
守護兵達は口々におじいさんの健闘を称えました。
遠く彼方から、今までの戦いの一部始終を眺めている、漆黒の鎧武者姿の”モノ”
『なるほど、あやつがこの前、儂が放った鬼共を……。それに、あの金色の輝きは見覚えあるぞ。……そうか! 四万手救の魂はあやつに取り憑いておるのか! フッフッフッフ』
『破禍軍団』首領『破禍将軍』改め、
『
『
手駒である鬼の軍勢が倒されたにもかかわらず、
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