第30話 バックラッシュ💀

 バックラッシュ。


 この言葉を聞いてゾッとする釣り人はかなり多いはず。

 やっちまうと、うゎ~~~~~っ!って叫びそうになるよね。

 そして凹むよね。


 なんか分かってもらえているコト前提で一人、盛り上がって(=×、盛り下がって=○)しまいました。が、もしも万が一、釣りやったことない人がこれ読んだのならば、完全に意味不明なので、ちょい説明。


 バックラッシュとは両軸受け(ベイト)リールにおいて、最もメジャーかつ厄介で、恐れられている糸のトラブルでございます。やらかした見た目がモジャモジャだから、「パーマネント」とか呼ばれることもあるよ。←実際に呼ぶ人見たことない。釣りの入門書で見たくらい。フツーにバックラッシュとかバックラとかゆーよね。

 キャストや落下といったスプールの逆転時、回転が糸の放出量を上回ったときに起こるっちゃんね。原因としては、サミング(親指で回転しているスプール止めたり、飛んでいる最中、触れて糸の出を調整をすること)のタイミングが悪かったり、投げるとき周囲の草木などに仕掛けが引っ掛かったり当たったり、突風や向い風で飛んでいる仕掛けが失速したり、飛んでいる最中糸が切れる等々。


 リールの構造上、完全には制御できないトラブルなので、ベテランやプロでも結構やらかすよ。ベテランでもやらかすということは、初心者ならなおさらやもんね。だから、これがトラウマになってベイトリールに苦手意識を持ってしまったり、最悪釣りから遠ざかったりといったことにもなり兼ねんのよ。


 軽度のバックラッシュならちょびっと弛む程度なので、糸を引っ張り出すことにより解消するんだけど、激しいのはモッサモサに膨れ上がるから、スプールが逆転しなくなって引っ張り出せなくなっちまう。絡まった部分をちょん切らないと治りません。巻いてある糸の半分以上がダメになることも珍しくなく、そうなると、治っても飛距離が出なくなり、使い物にならなくなっちまうんだよぅ。よって、その日そのタックルはお休みに(巻き替え用の糸、釣り場に持ってきているのなら話は別だけどね)。これが運悪くメインのタックルだったりすると、さらにテンションが下がり、ボーズ食らうことになったりすんのよね。


 そんな憎ったらしいバックラッシュを抑制するため、両軸受けリールには様々な工夫がしてあるんだけど、その代表的なのがブレーキなのよね。

 ブレーキってメーカーごとに特色があって、まんま代名詞みたいになっている。

 非接触式と接触式の二つに分けられて、非接触式は磁力を利用。電車のECBやトラックのリターダといった渦電流ブレーキと同じ原理。

 接触式は遠心力と摩擦を利用。ブレーキドラムの内側を、遠心力で広がったブレーキブロック(メーカーによって呼び名が違う)というパーツで押さえつけ制動力を得る、といった具合かな。


 で、具体的な特徴は以下の通り。

【ダイワ】

 電磁誘導ブレーキを採用。

 ・エアブレーキ=SV:扱える仕掛けの重さの幅が最も広い(AIRは除く)。同一ルアーでのピッチングとロングキャストが同じ設定でこなせてしまう優れもの。ダイワの中では最もバックラッシュしにくい部類で、「ノーサミングでキャスト!」なんて技もやってのける。キャスト全域にわたって引き摺った感がある。

 ・マグフォース3D:マグダイヤル20目盛×3モード=60段階の設定が可能。これもバックラッシュしにくい。

 ・マグフォースZ(V):SVが登場するまではほぼすべての機種に搭載されていた。可動式のインダクトローター(上の二つもこの方式)によりブレーキ力を自動で調整。キャスト後半ではノーブレーキに近い状態になるので、SVより伸びがいいのが特徴。Zが深溝スプール用、Vが浅溝スプール用。ここ何年かでV型スプール搭載機種はなくなったのでマグフォースVは見なくなった。

 ・マグフォース:初代マグサーボの名称が変更されたものなので、登場はかなり古い。多分1980年代の初め頃じゃなかろうか。固定式のインダクトローターで、ずっとブレーキ掛かりっぱなし。とはいえ「0」に近いほど弱くなるので、設定はちゃんとしないとバックラッシュしまくる。タトゥーラ150HDカスタムやジリオンHDカスタム、バスXに搭載。


 遠心ブレーキもあるけど、海のジギング専用モデルと大型淡水魚用リョウガ・シュラプネルぐらいかな。ここ最近、バス釣りメインのベイトには採用されてないね。ちょい前、リベルトピクシー 68R(L) SPRというモデルには搭載してあったけど。


 どのタイプもダイヤルのみの調整なので設定が簡単。仕掛けを変えたときの空気抵抗の変化や風などへの対応が素早くできる、といった特徴がありまする。


 これらの中でSVとマグフォース3Dは、初心者や苦手意識持った人にとって使いやすい性能だと思う。リョウガとかスティーズA TW、タトゥーラに搭載されたマグフォースZや、タトゥーラ150HDカスタムなんかのマグフォースも挙動が穏やかだから使いやすいよ。


【シマノ】

 遠心ブレーキを採用。

 所有している機種がカルカッタコンクエストだけなのよね。だから、詳しくはないし、比較もできなかったりするので、そこんとこ夜露死苦。

 多くの機種がSVS(シマノバリアブルブレーキシステム)と、その発展型のSVSインフィニティ&キャスコンの二段構え。SVSは遠心ブレーキの見本とまで言われるよーな完成されたシステムで、他社がこれを目標にしているとかなんとか、そんな話を聞いたことがあります。

 スパッと抜けたような投げ心地がすごく気持ちいいのよね。この感触、かなりクセになるかも。ただね、SVSって初速が早すぎるように思うのよ。なんかの雑誌だかインプレッションに、「使い手を選ぶ」とか書かれてあったもん。それ、よくわかる気がするなぁ。だから、初心者が使ったらバックラッシュしまくって嫌になるかも。慣れないうちは、手首のスナップを効かさず、ブレーキブロック多目に作動させる設定がよさそう。飛距離はそれなりに犠牲になるけどね。

 ハンドルとは逆側のプレートを開け、内部で設定するタイプだから、設定変えるのが少々面倒っちぃ。発展型のSVSインフィニティは外調整ダイヤルがあるから楽みたいだけどね。


 キャスコンはスプールのシャフトを軸方向に押さえつけ、摩擦によりブレーキをかける装置で、補助的に使うことが多いかな。ネジを締める向きに回すと強くなり、逆に回すと弱くなる。ダイワにも同じ機能のものが存在し、「メカニカルブレーキ」と呼ばれるよ。ダイワは一度設定すると再度弄ることってあまりないけど、シマノはダイワより頻繁に弄るかな。


 他にはDC(デジタルコントロールブレーキ)というのがあるけど、持ってないから詳しいことは分からないのよね。コンピューター制御によって、キャストの全域で最適なブレーキ力を得るシステムとゆーコトなんだけど、作用している力は磁力だから、マグネットブレーキの一種。一度だけ知人のスコーピオンDC使わせてもらったけど、えらい使いやすかった。安定したブレーキでぶっ飛んでいく感じが気持ちよかったよ。


 シマノにもダイワみたいなマグネットブレーキがないわけじゃない。アルデバラン BFS XGとかバスライズには採用されているのよね。


【ABU】

 マグネットと遠心の両方を採用。

 ABUはREVO LTXしか持ってないので、比較できねーのよ。だから、コイツの感想のみで勘弁。

 マグネット方式はマグトラックスマグネットブレーキという名称で、原理はダイワやシマノと同じ。とはいうものの、効きが極端な感じする。ある目盛を境に急にバックラッシュしだすのよね。ちょうどいいブレーキ力見つけるまで何回かバックラッシュ覚悟かも。決まってしまえばよく飛ぶし、バックラッシュもしにくいよ。


 遠心はIVCB、IB(マグ+遠心)といった名称で、構造はシマノのSVSみたいかな。こちらは使ったことすらないからなんとも…。



 上の説明だと、バックラッシュは両軸受けリールだけのトラブルだと思われてしまうかもだけど、スピニングリールでも起こるのよね。発生のメカニズムが少し違うから、ここでは触れないけど、そのうちネタにするかも。



 で。


 サブタイトルが「バックラッシュ」ということは。

 そう!そこのあなた、大正解です!!

 つい最近(今から一カ月ほど前)盛大にやっちまったんですよ。

 しかしまぁ…治らんバックラッシュは超久々にやらかしたなぁ。

 糸、新品に巻き替えたばっかでこの有様…マジで勿体ねぇ。

 とゆーわけで。

 どのリールでやらかしたかと申しますと、18リョウガ1016H。ダイワ丸型ベイトのフラッグシップモデルでございます。あと数話で登場するから詳細はその時にね。

 ブレーキはマグフォースZ。インプレッションにて「効きが強すぎる」だとか、「ブレーキ設定『0』でもまだ効いている」とか言われており、評価マジでクソなんだけど、ホントにそこまでクソなのかな?自分としてはキャスト中、糸が弛みかけてもリールが勝手に制御し、終息してくれるからスゲーいいと思うのだけど。


 そんな優秀なリールで、ですよ。

 治らんバックラッシュとか…ショック過ぎやし。流石、釣り歴40年超えは伊達じゃないな(泣)。


 発生の経緯は以下の通り。

 バックスイングを取り、イチオーは背後の草なんかも気にしつつ、サイドハンド気味のオーバーハンドで振り抜いたら、サオが身体の右後ろから真横にかけて通過する瞬間、


 パサッ!


 嫌な音と嫌な感触。


 ヤベッ!


 と思い、咄嗟にスプール押さえたんだけど…モシャモシャモシャ!って。

 ルアーは失速して川幅の1/4付近に着水、とゆーか落下。

 恐る恐るリールを見ると、フレームからはみ出るほどの糸。


 あ、これ…治らんヤツ。


 一目で修復不可能だと分かってしまいましたとさ。

 とはいえどーにかしたい気持ちはある。

 無駄とは思いつつも、一縷の望みを胸に糸を引っ張ってみる…ものの、スプールは完全にロック。


 ま、これじゃ動かんよね。分かっちょったよ。あ~っ、もぉ!巻き替えたばっかなのに、一回目の釣行でパーかよ!


 バッグからハサミを取出し、泣く泣くアフロ化した糸を切断。切った糸をスプールから引っ張り抜くと、1/2程度しか残っちゃいない。

 試しにリグり直して投げてみたのだけれど、どう頑張っても先ほどの飛距離には遠く及ばない。

 ただでさえ釣れないのに、テンションダダ下がりっすわ。

 しかもこの日はこのタックル一本のみ。

 強制終了でございますよ。

 フィールドは釣れそうな雰囲気醸し出しとったのになぁ…

 後ろ髪引かれる思いでタックルを片付け撤収したのでありました。めでたしめでたし。


 …なワケあるか!

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