第15話 混沌3

 凛は猫の額のような畑を茉緒に任せて藤林と国境になる豪族の三輪を探っている。最近は身近なところは息子の幸作が出張る。今回は年配の下忍と3人で早くも夫婦役をいいことに凛を抱いている。三輪はここ最近藤林に接近しているという話だ。中立派の豪族から調査があった。

「明日三輪の館に忍び込む」

 3日目に得意のたらし込みで幸作が今日藤林の小頭が来ると言う情報を掴んだ。

「そこまでのことはいいのでは?」

「ここで名誉挽回だ」

 そう言われて朝方から館の床に潜んだ。耳は茉緒に負けず凛も得意だ。下忍は逃げ道を確保している。幸作はこんな時も凛の体に触れてくる。

「・・・」

 凛は口だけ開けて幸作に知らせる。二人が向かい合っている。

「藤林殿は今後どうなさるのか?」

「百地とは争わず服部と戦うとの館様の」

「それなら安心ですわ」

 三輪は百地一族とは国境が接しているが服部とは遠く離れている。

 次の瞬間畳を突き抜けて真剣が飛び込んでくる。凛の体はばね仕掛けのように床を走り抜けている。後ろに幸作の声がしている。走ることなら誰にも負けない。下忍が逃げ道を用意している。万が一の出会いの場に着くと下忍が崖の上から縄を投げてくる。

 幸作は館を出た時には凛の姿は見えなくなっている。手裏剣が背中に刺さる。途端に前のめりになり倒れる。剣術も走ることも苦手な幸作なのだ。

 崖を超えるとそのまま尾根伝いに走り続ける。伝令が先で助けることはないと教えられている。まやかしの道を抜けて母屋に着く頃には小頭も茉緒も揃っている。あの事件より小頭は茉緒を立てている。

「三輪に捕まったのか?」

「藤林の小頭と思えます」

「不味いな藤林は」

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