第12話 夢の芽12

「絹の住まいはどこだ?」

「一番奥の傾斜にある」

 凛の後を茉緒が坂道を登る。

「凛だね?」

 板戸に手をかけた同時に中から声がかかる。外を窺える工夫が施されているのだろう。

「痛み止めを届けに来ました」

 菜緒はお祖母ちゃんから薬の処方の指導を受けてきた。実際に武器として使うことも多い。

「ありがとう。腕の付け根が腫れているのよ。でも凛に助けられたよ」

「ところで絹さんは藤林の抜け忍ですね?」

「誰に聞いた?」

「頭です。私も藤林の抜け忍に運ばれてここに来ました。15年前の大火ご存知ですか?」

「知ってるわ。それが元で追い払われたのよ。とくにお館付きの女中や警護が5人追放された」

「お館は大やけどをしたと聞いていますが、犯人は分かったのですか?」

「服部の手のものとしか?」

「亡くなったり消えたものは?」

「警護の忍者が2人と小頭と息子が焼け死んだと聞いています」

「死体は?」

「小頭と息子の死体はなかったと思うわ」

 私を抱えて走ったのは父だ小頭ではない。あの感触は父の感触だ。と言うことは今の頭巾を被った藤林のお館は何者だ。

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